デンキナマズ(読み)でんきなまず(その他表記)electric catfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デンキナマズ」の意味・わかりやすい解説

デンキナマズ
でんきなまず
electric catfish
[学] Malapterurus electricus

硬骨魚綱ナマズ目デンキナマズ科Malapteruridaeに属する淡水魚。シビレナマズともいう。ナイル川水系、アフリカ西部の川、チャド湖、トゥルカナ湖盆地、ザンベジ川のアフリカ熱帯域に広く分布する。体に鱗(うろこ)がなく、鰭条(きじょう)のある背びれがなく、脂びれが体の後半部にある。最大1.2メートルにもなるが、普通は65センチメートル前後である。夜行性で、日中は物陰水底に潜んで夜に動きだして放電し、小魚ミミズなどを食べる。外見による雌雄の差はあまりなく、産卵は水底のくぼみにする。

 発電器官は、筋肉組織から分化したほかの発電魚と違って、皮膚と筋肉の間にある腺(せん)組織から分化したと考えられており、頭を除いた体の両側のほとんど全体に分布している。電板は皮膚と筋肉の間に密着したゼラチン質の膜中に散在し、体軸に対して直角となっている。頭に近いほうが陰極、尾のほうが陽極となり、電流は頭から尾のほうへ流れる。放電は餌(えさ)をとるための瞬間的なものであり、起電力は普通100ボルトくらいであるが、ときには400~500ボルトも出して小魚をショック死させることもある。5センチメートルの幼魚でも発電する。放電は魚の自由意思でコントロールできる。

 現地では食用にする。観賞魚としても輸入されているが、同類をも放電で殺すことがあるので1尾ずつ飼うのが望ましい。また、水換えのときの感電にも注意を要する。

[中坊徹次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デンキナマズ」の意味・わかりやすい解説

デンキナマズ
Malapterurus electricus; electric catfish

ナマズ目デンキナマズ科の淡水魚。体長 1.2m内外。体はナマズに似てやや細長く,背鰭はなく,脂鰭をもつ。眼は小さい。口のまわりに 6本のひげがある。鱗はない。体の両側に発電器官をもち,採餌および防御に際して 300~400Vの強力な発電をする(→電気魚)。熱帯アフリカに分布する。

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百科事典マイペディア 「デンキナマズ」の意味・わかりやすい解説

デンキナマズ

デンキナマズ科の魚。別名シビレナマズ。アフリカ中〜西部に分布。口辺に3対のひげがあり,全長1mを超すものもある。発電器はほとんど全身をおおい,最高400Vの強い放電をする。夜行性。水槽に他魚と同居させると同種のものでも殺してしまう。卵は雄が口中で保護する。

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改訂新版 世界大百科事典 「デンキナマズ」の意味・わかりやすい解説

デンキナマズ

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世界大百科事典(旧版)内のデンキナマズの言及

【脊髄】より

…爬虫類と鳥類の側索の腹外側の表面と,鳥類の腰膨大の背側正中にあるくぼみには,グリコーゲンに富んだ細胞が集まっているが,このグリコーゲンの意味はわからない。またデンキナマズでは中心管の近くに発電器官を支配する巨大細胞があり,その細胞間には興奮の伝達が電気的に起こるシナプスがみられる。 鳥類では哺乳類の錐体路のように,大脳から直接脊髄まで下がる神経繊維があるといわれている。…

【電気魚】より

…発電魚ともいう。筋肉が変化してできた発電器官をもつ魚の総称で,南アメリカ産のデンキウナギ,アフリカ産のデンキナマズ,海産のシビレエイなどが有名。発電器官は,筋細胞に由来する多数の扁平な発電単位,すなわち電気板が規則的に配列,接続したもので,神経の指令によって短時間の一斉放電を起こす。…

【ナマズ(鯰)】より

…アメリカナマズは雑食性で,共食いの習性がなく,養殖しやすいといわれる。デンキナマズMalapterurus electricus(英名electric catfish)はマラプテルルス科Malapteruridaeに属し,アフリカのコンゴとナイル川の流域とその付近に分布する。背びれがなく,あぶらびれが尾びれのすぐ前方に位置する。…

※「デンキナマズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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