デンドロビウム(読み)でんどろびうむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム
でんどろびうむ
[学] Dendrobium

ラン科(APG分類:ラン科)セッコク属総称。ラン科植物中2番目の大属。約1000種が熱帯アジア、ニューギニア島を中心に分布し、日本にもセッコクD. moniliforme (L.) Sw.ほか2種が自生する。樹上高く着生し、美しい花をつける種が多い。園芸的に広く栽培されるものにはノビル系とデンファレ系の二つのグループがある。

 ノビル系はインド北部から中国南部にかけて産するデンドロビウム・ノビルD. nobile Lindl.を中心に改良された系統で、茎が肥厚し、30~70センチメートルに伸び、次の年の秋、落葉した茎の各節に2、3個ずつ花をつけ、冬から春に開花する。鉢物、切り花として利用される。セッコクとの交雑品種は小形で強健である。デンファレ系はニューギニア島近辺に産するデンドロビウム・ファレノプシスD. bigibbum Lindl.(D. phalaenopsis Fitzg.)を中心に改良された系統で、1メートル前後の茎の上部から、長い花茎を伸ばして10花余りをつけ、切り花に適する。花は秋に多く咲くが、周年開花する品種もある。

 一般にミズゴケで小さめの素焼鉢に植え、生育期には十分灌水(かんすい)し、秋から春までは乾きめに扱う。夏以降は肥料を与えず、葉焼けしない程度によく日光に当てる。花芽は低温によってつくられるので、晩秋十分な寒さ(10℃、2週間以上)に当ててから室内に取り込まないと花がつかない。ノビル系は最低10℃で越冬する。またセッコクとの交雑種は5~6℃で越冬する。デンファレ系は高温で育ち、冬期は最低17℃で栽培する。

[唐澤耕司 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム
Dendrobium

ラン科の一属。アジア大陸の熱帯を中心に,オーストラリア,ポリネシア諸島に約 900種があるセッコク属の学名属名)であるが,園芸界では特にヒマラヤからマレーシアに自生するコウキセッコクを母種として改良された多くの園芸品種をこの名で呼んでいる。デンドロビウム・ビギバムを元に交配したデンドロビウムを,日本ではその形などがコチョウランに似ていることから,コチョウランの英語名ファレノプシスをとってデンファレ Den-Phalaeと呼ぶ。日本の西南部の照葉樹林中で樹上や岩などに着生するセッコクも,花は小さいが美しく,観賞用に栽培されることもある。

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