デンドロビウム(その他表記)Dendrobium

デジタル大辞泉 「デンドロビウム」の意味・読み・例文・類語

デンドロビウム(〈ラテン〉Dendrobium)

ラン科セッコク属植物総称。茎は節が多く、楕円形の厚い葉が互生する。花は白・黄・桃色などで、房状につく。熱帯アジアからオーストラリア多数種類分布。園芸品種も多い。

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精選版 日本国語大辞典 「デンドロビウム」の意味・読み・例文・類語

デンドロビウム

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] dendrobium ) ラン科セッコク属植物の総称。熱帯アジアを中心にポリネシアセイロン島および日本にかけ約九〇〇余種が知られている。樹上や岩に着生し、一般に茎に節がある。花序は茎の上部の節から出て単一の総状花序に咲く。花には側弁とほぼ同形の上萼片があり、側萼片は蕊柱の基部で合生し長い距(きょ)になる。日本にはセッコクが岩手県以南の暖帯林に、また、キバナノセッコクは四国、九州、沖縄に生育する。他に外来種が、切花用および鉢植えにして広く愛好されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム
Dendrobium

ラン科セッコク属Dendrobiumに属する園芸種の総称。着生多年草で,通常は常緑だが,中には落葉するものもある。インド北部からマレーシア地域,さらにオーストラリア北部や太平洋諸島まで広く分布するランで,日本にもセッコク,キバナノセッコクの2種がある。樹木や岩に着生している。デンドロビウムの語は樹(dendro)の生命(bios)の意。

 セッコク属には約1000種ほどがあり,株の形態も育て方も異なるものが多い。多くは細長い茎をもち,茎の基部より毎春,新芽が発生して伸びる。花をつける茎は直立するが,中には垂下するものもある。通常は丸型の茎が多いが,シカクセッコクD.tetragonum A.Cunn.(オーストラリア原産)のように角型の茎をもっているものや扁平な茎を有する種もあり,花の大きさや色もさまざまで変化に富む。日本で園芸植物として量産され,よく見かけるものには,デンドロビウム・ノビレD.nobile Lindl.(和名コウキセッコクヒマラヤから中国南部原産)を基本に育成され,冬から春に咲くノビレ系と,デンドロビウム・ファレノプシスD.phalaenopsis Fitzg.(和名コチョウセッコク。ニューギニアからオーストラリア北部原産)を基本に育成され,秋から冬にかけて咲くファレノプシス系とがある。ノビレ系は茎にある節から短い花序を出して花をつけるが,ファレノプシス系は茎の頂部の葉腋ようえき)から長さ30~50cmの花序を伸ばし,5~20輪の花を総状につける。後者は熱帯では周年開花し,切花として広く用いられている。このほか,多少垂下ぎみの茎の各節に短い花序を出すものに,デンドロビウム・アグレガトゥムD.aggregatum Roxb.(ミャンマー,中国南部原産),デンドロビウム・ファルメリD.farmeri Roxb.(ヒマラヤからミャンマーの山地原産),デンドロビウム・デンシフロルムD.densiflorum Wall.(ヒマラヤ原産),フチトリセッコクD.fimbriatum Hook.(ヒマラヤ原産),デンドロビウム・テュルシフロルムD.thyrsiflorum Reichb.f.(ヒマラヤからミャンマー原産)がある。またオーストラリア産の,茎の頂部から出る長い花序に総状に多数の花をつけるタイミンセッコクD.speciosum Smith,やはり総状花序に少数の花をつけるデンドロビウム・キンギアヌムD.kingianum Lindl.などや,耐寒性のある日本産のセッコクも栽培される。

 セッコク属は近縁の属がないため,属間交配はされていないが,多くの種間交配によって育成された園芸品種がある。ノビレ系の改良は日本が世界でいちばん進んでおり,銘花を続出させている。ヒマラヤ山地系の種を中心に改良されたノビレ系や房咲系は,春から秋まで日光によく当て,肥料は春から夏までに与え,秋からは水を少なくして開花させる。越冬は6~7℃。熱帯系の種を中心に改良されたファレノプシス系は,春から秋までの間,直射日光と多肥を必要とし,越冬は10℃以上にする。両者とも株分けで春にふやす。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム
でんどろびうむ
[学] Dendrobium

ラン科(APG分類:ラン科)セッコク属の総称。ラン科植物中2番目の大属。約1000種が熱帯アジア、ニューギニア島を中心に分布し、日本にもセッコクD. moniliforme (L.) Sw.ほか2種が自生する。樹上高く着生し、美しい花をつける種が多い。園芸的に広く栽培されるものにはノビル系とデンファレ系の二つのグループがある。

 ノビル系はインド北部から中国南部にかけて産するデンドロビウム・ノビルD. nobile Lindl.を中心に改良された系統で、茎が肥厚し、30~70センチメートルに伸び、次の年の秋、落葉した茎の各節に2、3個ずつ花をつけ、冬から春に開花する。鉢物、切り花として利用される。セッコクとの交雑品種は小形で強健である。デンファレ系はニューギニア島近辺に産するデンドロビウム・ファレノプシスD. bigibbum Lindl.(D. phalaenopsis Fitzg.)を中心に改良された系統で、1メートル前後の茎の上部から、長い花茎を伸ばして10花余りをつけ、切り花に適する。花は秋に多く咲くが、周年開花する品種もある。

 一般にミズゴケで小さめの素焼鉢に植え、生育期には十分灌水(かんすい)し、秋から春までは乾きめに扱う。夏以降は肥料を与えず、葉焼けしない程度によく日光に当てる。花芽は低温によってつくられるので、晩秋十分な寒さ(10℃、2週間以上)に当ててから室内に取り込まないと花がつかない。ノビル系は最低10℃で越冬する。またセッコクとの交雑種は5~6℃で越冬する。デンファレ系は高温で育ち、冬期は最低17℃で栽培する。

[唐澤耕司 2019年5月21日]


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百科事典マイペディア 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム

熱帯アジアを主として,オーストラリアから太平洋諸島に分布するラン科の一属で,日本のセッコクも含まれ,約1000種がある。いずれも着生で気根をもち,節のある茎(偽球茎)から花柄をのばし,花は側萼片と蕊柱(ずいちゅう)脚が合わさってメンタムと呼ばれる距状突起をつくる。切花や鉢植用に最も多く栽培されるのは,デンドロビウム・ノビレ系統と,デンドロビウム・ファレノプシス系統の交雑種。前者は冬から春にかけて開花し主に鉢植用,後者はいわゆる〈デンファレ〉と呼ばれるもので,東南アジアからの輸入品や沖縄での生産品が周年出回り,切花として欠かせないものになっている。
→関連項目熱帯植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デンドロビウム」の意味・わかりやすい解説

デンドロビウム
Dendrobium

ラン科の一属。アジア大陸の熱帯を中心に,オーストラリア,ポリネシア諸島に約 900種があるセッコク属の学名(属名)であるが,園芸界では特にヒマラヤからマレーシアに自生するコウキセッコクを母種として改良された多くの園芸品種をこの名で呼んでいる。デンドロビウム・ビギバムを元に交配したデンドロビウムを,日本ではその形などがコチョウランに似ていることから,コチョウランの英語名ファレノプシスをとってデンファレ Den-Phalaeと呼ぶ。日本の西南部の照葉樹林中で樹上や岩などに着生するセッコクも,花は小さいが美しく,観賞用に栽培されることもある。

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世界大百科事典(旧版)内のデンドロビウムの言及

【オサラン】より

…日本にはオオオサランE.corneri Reichb.f.とリュウキュウセッコクE.ovata Lindl.の2種があり,主に琉球に分布する。セッコク(セキコク)属Dendrobiumに近縁だが,オサラン属は8個の,セッコク属では4個の花粉塊を有することで区別される。【井上 健】。…

【セッコク(石斛)】より

…日本で最も目にするラン科の着生ラン(イラスト)。主として葉の変異品を,江戸時代より長生蘭(ちようせいらん)と呼んで栽培してきた。近来は花の美しさも注目されて,濃紅色,紅色,丸弁などの変異品も珍重されている。茎は叢生(そうせい)し,高さ5~40cm,数節よりなる。葉は二年生で数枚が互生し,長さ5cmくらい。5~6月,葉の落ちた3年目の茎の上部の節より,数花ずつが束になって咲く。花は白色から淡紅色で,径3~4cm。…

※「デンドロビウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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