日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥピ」の意味・わかりやすい解説
トゥピ
とぅぴ
Tupi
南アメリカのトゥピ語を話す諸集団の総称。アマゾン川の南からラ・プラタ川までの広大な地域に多数の部族、村に分かれて住んでいる。ブラジル中部の大西洋沿岸に広く分布するトゥピナンバの諸集団、アマゾン川流域のカワイブ、シリオノ、パラグアイ東部を中心に住むグァラニなどの諸集団がある。トゥピの生活は住む地域によって異なるが、一般に、マニオク(キャッサバ)、トウモロコシ、サツマイモなどを作物とする焼畑農耕と狩猟、採集を行う。川や海の近くに住むトゥピでは漁業が重要である。海岸地域では数千人からなる村をつくることがあるが、多くは数百人程度の村で、それ以上の社会組織はみられない。グァラニとトゥピナンバの諸集団の村は父系親族によって構成される。シリオノは母系出自で、結婚すると夫婦は妻の村に住む。トゥピ諸集団の多くはかつて村を単位として絶えず戦争を行い、敵を食人する習慣をもっていた。さまざまな精霊を信じ、病気治療を行うシャーマンがいる。
[板橋作美]