翻訳|Tupi
南アメリカの先住民集団。ブラジルからアルゼンチン北部にまたがる海岸地帯,アマゾン川本流の上・下流域,マデイラ,タパジョス,シングー,トカンティンスの各支流域に住む。トゥピ・グアラニー語族に属するトゥピ語を話す諸部族の総称で,人口総数は不明。ヨーロッパ人の征服後,トゥピ語はブラジルのアマゾン流域で一つの共通語(リングア・ジェラル)となった。白人と早くに接触し,絶滅してしまった部族もある。ポルトガル人と最初に接触したのは,ブラジル大西洋岸に住むトゥピ系のトゥピナンバであった。トゥピは海岸や大河沿いに住んでいたため,カヌーの操作に習熟している。村の規模は部族によって異なるが,トゥピナンバでは数千人もの規模にまでなったと,古い記録には記されている。
生業は,農耕,狩猟,漁労,採集の混合であるが,大河沿いの土地が肥沃な所では,有毒マニオクを主要作物とする焼畑農耕が主力であり,支流沿いのもっと条件の悪い所(トカンティンス川上流のタピラペなど)では狩猟の比重が重くなっている。漁労はどこでも重要で,カヌーから弓矢や銛を使ったり,小川をせき止めて毒を流したりして魚をとる。漁労は狩猟より確実なだけに,タンパク質供給源としての魚は森の動物より重要とさえいえる。村は拡大家族が住むいくつかの大きな家から成る。村の中央には広場があり,そこには男の家が建つ場合もある。トゥピにおいては,近縁のグアラニーにおけるのと同じく,宗教的指導者のシャーマンが重要な役割を果たす。シャーマンは病人を治療し,宗教的儀礼をつかさどる。トゥピにはまた,この世にはどこかに楽園があり,そこにたどり着けば永遠の幸せを得られると考えるグループもある。そのため,この楽園を求め,かつては奥地からシャーマンに導かれ海岸へとさまよい出て来た者もあった。
執筆者:木村 秀雄
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南アメリカのトゥピ語を話す諸集団の総称。アマゾン川の南からラ・プラタ川までの広大な地域に多数の部族、村に分かれて住んでいる。ブラジル中部の大西洋沿岸に広く分布するトゥピナンバの諸集団、アマゾン川流域のカワイブ、シリオノ、パラグアイ東部を中心に住むグァラニなどの諸集団がある。トゥピの生活は住む地域によって異なるが、一般に、マニオク(キャッサバ)、トウモロコシ、サツマイモなどを作物とする焼畑農耕と狩猟、採集を行う。川や海の近くに住むトゥピでは漁業が重要である。海岸地域では数千人からなる村をつくることがあるが、多くは数百人程度の村で、それ以上の社会組織はみられない。グァラニとトゥピナンバの諸集団の村は父系親族によって構成される。シリオノは母系出自で、結婚すると夫婦は妻の村に住む。トゥピ諸集団の多くはかつて村を単位として絶えず戦争を行い、敵を食人する習慣をもっていた。さまざまな精霊を信じ、病気治療を行うシャーマンがいる。
[板橋作美]
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…文法や語彙の面ではスペイン語との類似が顕著であるが,ラテン語の直説法現在完了形,過去完了形に由来する形態(後者はおもに書き言葉で使われる)が元来の用法に近い機能を果たすなど保守的な傾向を示す一方,独得の〈人称不定法〉を発達させている点などが注目される。ブラジルのポルトガル語は,音韻・文法・語彙・正書法の各側面においてポルトガルのポルトガル語と相違を見せる(iに先立つt,dの口蓋化,補語人称代名詞を動詞に前置させる傾向,先住民族の言語たるトゥピ語Tupiからの借用語など)が,両者の関係は同一言語の二つの〈変種〉としてとらえるべきものである。 なお,16世紀半ばから約100年にわたる,通商上また布教上の目的で来日したポルトガル人の活動を通じ,少なからぬポルトガル語の単語が日本語に取り入れられた(〈パン〉〈ボタン〉〈イギリス〉など)ほか,日本語の辞書・文典などがポルトガル語を用いて作成され,当時の日本の言語・文化を知る上で貴重な資料となっている。…
※「トゥピ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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