翻訳|shoot
植物体において1本の茎とその茎に配列する葉からなる一つの単位を苗条(芽条,シュートともいう)という。1本の枝は一つの苗条であり,枝からさらに枝が出ればこれも一つの新しい苗条である。側芽や不定芽も枝になるから若い苗条である。ただし頂芽は苗条の延長部をつくる部分であるから,一つの苗条のうちの若い部分ということになる。子葉の上にできる幼芽も若い苗条であり,植物体の最初の苗条をつくる。苗条の先端には必ず茎頂があるが,この茎頂が枯れたり花や花序となって終わるとその苗条はそれ以上のびなくなり,以後の植物体の伸長は他の苗条の活動によって行われることとなる。苗条という概念は日本には本来なかったため,苗条という用語は訳語としてつくられたが,必ずしも適訳とはいえない。しかし苗条は維管束植物の植物体の基本的な単位であり,この概念は植物の形を理解する上からきわめて重要である。
執筆者:原 襄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
維管束植物の、一つの茎とそれについている葉とをまとめてよぶ語。英語のシュートshootに相当するが、苗条の語が適訳でないという考えから、シュートと片仮名で書くこともある。茎の先端にあって茎の成長点ともよばれる茎頂分裂組織において細胞が増加すると、これらの細胞は茎の成長のもととなるだけでなく、茎頂はその側方に規則的な配置と周期で葉を形成する。したがって、苗条は、一つの茎頂分裂組織によってつくられたものの全体をさすということもできる。本来の茎頂とは別の位置(たとえば葉腋(ようえき))に新しい茎頂ができたり、本来の茎頂が二分して二つの新しい茎頂ができ、これらの活動によって茎や葉がつくられたならば、そこには新しい苗条が生じたこととなる。
同じ植物の苗条に、節間の長さが著しく短くて年々わずかしか伸びないものと、そうでないものが区別されるとき、それぞれを短枝、長枝とよぶ。イチョウ、カラマツ、カツラ、ウコギなどの例がある。マツの長枝は鱗片葉(りんぺんよう)のみをつけ、その葉腋から出る短枝はいくつかの鱗片葉と1ないし5本の針葉をつけて成長を終えるが、まれに、針葉の間から苗条が伸びて短枝が長枝に転換することがある。
[福田泰二]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… 茎頂はさかんに生長している茎の先端部にも,また休眠している芽の中にもある。1本の茎とその茎のまわりに配列する一つのまとまりを苗条(シュート)というが,ふつう苗条の先端には茎頂があって,その苗条の延長部をつくる。1本の枝は一つの苗条であり,茎頂は枝の伸長に中心的な役割をもつ。…
※「苗条」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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