トラカミキリ(読み)とらかみきり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラカミキリ」の意味・わかりやすい解説

トラカミキリ
とらかみきり / 虎天牛

昆虫綱甲虫目カミキリムシ科の一群Clytiniに属する昆虫の総称。世界各地に分布しており、1000種近くが知られ、日本産はおよそ70種ほどである。中形からやや小形の細長い甲虫で、体表は密に毛で覆われており、毛色によって縞(しま)模様などのきれいな斑紋(はんもん)を現すものが多い。頭は前に突き出るが触角は短く、肢(あし)は細長い。前胸は丸く球形に近いが、円筒形のこともあり、上ばねは長くて両側が平行かすこし後方へ細くなり、肩が張っている。枯れ木、薪(まき)に集まり、樹葉上にもみられるが、花に集まる種類も少なくない。行動はすばやいものが多く、よく飛ぶ。幼虫は普通枯れ木やその枝の内部を食害するが、タケトラカミキリのように枯れたタケにつくものもあり、スギ生木に枯れ枝から侵入し加害するスギノアカネトラカミキリ(キオビトラカミキリ)や、クワの生木につくトラフカミキリのようなものもある。日本の最大種オオトラカミキリは北海道で針葉樹にかなりの被害を与えたことがある。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トラカミキリ」の意味・わかりやすい解説

トラカミキリ
Xylotrechus chinensis

鞘翅目カミキリムシ科。トラフカミキリともいう。体長 15~25mm。体は赤褐色で,頭部,前胸背前縁,小楯板,上翅,腹部などは黄色短毛を密生する。前胸背中央部の横帯と後部黒色。上翅には黒色横帯があり,基半部のものは斜走する。頭部は前胸に深く陥入し,一体となってほぼ円形となる。触角は短い。上翅は肩部で前胸とほぼ同幅で,後方に向って細まる。クワの害虫で,幼虫は材中に穿孔する。成虫は7~8月に出現し,スズメバチ類に擬態する。北海道,本州,四国,九州,台湾,朝鮮,中国に分布する。近縁のタケトラカミキリ Rhaphuma annularisは体長9~15mm,体は黒色で細く,触角の基部4~5節と肢は赤褐色。背面は黄色の微毛におおわれ,前胸背と上翅に黒色紋がある。上翅端は斜めに切断される。タケの害虫で,成虫は夏季に出現する。本州以南の日本全土,台湾,朝鮮,中国に分布する。なおトラカミキリ類はハチ類に似るものが多い。

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