アメリカの経済学者。アメリカの代表的なケインズ学派として、貨幣を重視するM・フリードマンなどのマネタリストと華々しい論争を繰り広げた。イリノイ州シャンペーンに生まれる。ハーバード大学で経済学を学び1939年に卒業、さらに同大学院修士課程を1940年に修了した。第二次世界大戦中は海軍に在籍し、駆逐艦カーニー号の副艦長を務めた。1946年ハーバード大学に戻り、1947年博士号を取得した。ハーバード大学で教えたのち1950年にエール大学の準教授となり、1955年教授に昇格、コールズ財団経済研究所の所長も務めた。1955年にジョン・ベーツ・クラーク賞を受賞し、1961年にケネディ大統領の経済諮問委員会委員となり、1971年にはアメリカ経済学会会長に就任した。
トービンの研究は経済全般に及ぶが、なかでも経済における貨幣の役割に関心を寄せた。とくに有名なものは、資産選択(安全な預金か、債券、株式の危険資産か)の行動を分析した資産選択の理論(ポートフォリオ理論)の研究であり、さらにこの理論をマクロモデルに組み入れ、ミクロとマクロの統合を企てるとともに、貯蓄フローを資産ストックに結び付けた。経済成長理論においても貨幣的要因を導入し、新古典学派の新しい経済成長モデルを提唱、均衡的な経済成長は貨幣需要に大きく影響されるとした。
投資理論において「トービンのq」とよばれる概念を提出し、金融市場の攪乱(かくらん)が実物市場に与えるメカニズムを解明したことでも知られている。1981年に「金融市場、ならびに金融市場と支出決定・雇用・生産との関係の分析」の業績によって、ノーベル経済学賞を受賞した。
[金子邦彦 2019年2月18日]
『ジェームズ・トービン著、間野英雄他訳『国民のための経済政策』(1967・東洋経済新報社)』▽『ジェームズ・トービン著、矢島鈞次他訳『インフレと失業の選択――ニュー・エコノミストの反証と提言』(1976・ダイヤモンド社)』▽『ジェームズ・トービン著、浜田宏一他訳『マクロ経済学の再検討――国債累積と合理的期待』(1981・日本経済新聞社)』
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アメリカの経済学者。ハーバード大学卒。同大で博士号を取得。1955年からイェール大学教授。〈金融市場の分析,および支出決定,雇用,生産や財価格と金融市場との関連の分析〉に貢献したことをたたえられ,81年にノーベル経済学賞を受賞した。家計や企業が多様な資産を保有していることを,危険と期待利得のバランスから説明するポートフォリオ・セレクション理論(〈資産選択理論〉の項参照)の創始者の一人で,これを金融市場の分析に適用して金融市場が家計や企業の支出決定に及ぼす影響を明らかにした。その分析の特徴は,貨幣を含む金融資産の多様性,さまざまな制度的要因,金融市場と他の市場との相互依存をはっきりした形で考慮することにある。この考えは現代の金融論に大きな影響を与えている。彼の業績は計量経済学,経済成長論等広範囲に及んだ。また,ケネディ大統領の経済諮問委員会委員(1961-62)として活躍した。
執筆者:西村 清彦
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…このようにして決定される利子率が企業の投資などの支出活動に影響を及ぼすのであり,投資と貯蓄の均等化を達成する調整因子として利子率はなんらの役割も果たさない。 このような貨幣利子理論は,トービンJames Tobin(1918‐ )の理論などより複雑な分析枠組みへと拡張されることによって,今日では正統的な理論として一般に受け入れられている。
[利子率の期間構造]
利子率はさまざまの金融資産から獲得できる金銭的な収益を計る尺度とみることができる。…
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