ドクウロコイボダイ(読み)どくうろこいぼだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクウロコイボダイ」の意味・わかりやすい解説

ドクウロコイボダイ
どくうろこいぼだい / 毒鱗疣鯛
smalleye squaretail
Cuvier's squaretail
[学] Tetragonurus cuvieri

硬骨魚綱スズキ目ドクウロコイボダイ科に属する海水魚。北海道以南の太平洋沿岸、山陰地方などの日本海沿岸など太平洋、大西洋の温帯域から熱帯域に分布する。体は細長く、横断面は楕円(だえん)形。尾柄(びへい)部は頭長よりも長い。頭は小さくてやや縦扁(じゅうへん)する。吻(ふん)は鈍く、吻長は眼径より長い。目は小さく、眼径は頭長の20%以下。口も小さく、頭の前端に開く。上顎(じょうがく)の大部分は眼前下にある骨に覆われて露出しない。上顎の後端は目の前縁下に達する。上顎では小さくて先端のとがった鋭い歯が1列に並び、下顎では大きくて平たい歯が先端で湾曲する。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも歯がある。鱗は重厚な菱形(ひしがた)で、規則的に斜めに並び、体に固着し、はがれにくい。鱗の表面に顕著な水平の隆起がある。側線は体の背縁と並行して走り、尾びれ基底まで達しない。背びれは2基あり、第1背びれは16~19棘(きょく)で、各棘は短くて強い。第2背びれは12~13軟条、臀(しり)びれは1棘12軟条。胸びれは短く、腹びれ起部は胸びれの基底のやや後方にある。尾びれは深く二叉(にさ)し、尾びれの上葉と下葉の基底に顕著なキール(竜骨(りゅうこつ))状の隆起がある。体は黒褐色。沖合いの中層から表層域にすみ、流し網、定置網延縄(はえなわ)などでまれにとれる。稚魚は管状のサルパ類などを隠れ家にしていると考えられている。最大全長は40センチメートル。食用として利用されていない。和名のドクウロコイボダイはこれを食べて中毒を起こしたという報告に基づいているが、毒性の試験はされていない。

 本種が属するドクウロコイボダイ科には、日本からもう1種ツマリドクウロコイボダイT. atlanticusが報告されているが、この種は目が大きく、眼径が頭長の約27%あり、吻が角張り、第1背びれ棘が14本あることで本種と区別できる。

[尼岡邦夫 2024年8月16日]

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ドクウロコイボダイ

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