ドクメンタ(読み)どくめんた(英語表記)documenta

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクメンタ」の意味・わかりやすい解説

ドクメンタ
どくめんた
documenta

ドイツのヘッセン州カッセル市で開催される国際美術展。1955年の第1回展以来、4~5年おきに開催され、97年に第10回展を迎えた。ナチスの文化政策と戦争とによって息をひそめ、国際水準から取り残されていた自国の美術を復活させることが当初の目的とされ、第1回展では、第二次世界大戦以前にナチスによって退廃芸術烙印(らくいん)を押されたモダンアートが展示された。1960年の第2回展以降はアメリカの作品も加えられ、その後次第に規模を拡大してきた。現在ではベネチアビエンナーレとともに、世界の現代美術の最新の動向を紹介するもっとも重要な国際展となっている。ただし、ベネチア・ビエンナーレが国別にアーティストを選出し、審査によって賞を授与する一種のオリンピック的性格をもっているのに対して、ドクメンタは通例一人のディレクターがあるテーマのもとに全参加アーティストの人選を行う。そのためか人選が欧米系のアーティストに偏るむきがあるが、これまでに日本人としては荒川修作河原温(かわらおん)、高松次郎原口典之川俣正、吉澤美香らが参加している。第10回展はフランスのカトリーヌ・ダビッドCatherine David(1954― )が女性として初めてディレクターを務めた。

[大谷省吾]

『ヤン・フート他著、池田裕行訳『アートはまだ始まったばかりだ ヤン・フート ドクメンタ9への道』(1992・イッシプレス)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例