日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーア」の意味・わかりやすい解説
ドーア
どーあ
Ronald Philip Dore
(1925―2018)
イギリスの社会学者。日本研究家としても著名である。イングランドのボーンマスに生まれる。ロンドン大学の東洋・アフリカ研究学院で日本研究を専攻、卒業後母校で講師を務める。ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の準教授などを経て、1982年からは長くロンドン大学の教授を務めた。日本で最初に訳された『都市の日本人』(1958)では、東京都心に近い一つの町を取り上げて、そこに居住しながら調査し、日本人の生活実態、生活様式、生活態度を微細に浮かび上がらせることに成功した。またその後の『イギリスの工場・日本の工場』(1973)では、日立製作所とイングリッシュ・エレクトリック社(1968年、ゼネラル・エレクトリック社に吸収合併)を取り上げて克明な調査分析を進め、日本的経営の特質をみごとに描き出した。また日本を含めた比較分析によって学歴社会の病患を描き出し、その改善策を提言した『学歴社会 新しい文明病』(1976)は、知日派知識人としての面目を示すものである。ほかに『21世紀は個人主義の時代か』(1991)、対談集『日本との対話』(1994)、『日本型資本主義と市場主義の衝突』(2000)などがある。
[元島邦夫・原 純輔]
『青井和夫・塚本哲人訳『都市の日本人』(1962・岩波書店)』▽『R・P・ドーア著、並木正吉・高木径子・蓮見音彦訳『日本の農地改革』(1965・岩波書店)』▽『R・P・ドーア著、松居弘道訳『江戸時代の教育』(1970・岩波書店)』▽『松居弘道訳『学歴社会 新しい文明病』(1978・岩波書店/2008・岩波モダンクラシックス)』▽『加藤幹雄訳『21世紀は個人主義の時代か――西欧の系譜と日本』(1991・サイマル出版会)』▽『ロナルド・ドーア、深田祐介著『日本型資本主義なくしてなんの日本か』(1993・光文社)』▽『ロナルド・ドーア著『「こうしよう」と言える日本』(1993・朝日新聞社)』▽『ロナルド・ドーア著『不思議な国 日本』(1994・筑摩書房)』▽『ロナルド・ドーア編『日本との対話――不服の諸相』(1994・岩波書店)』▽『青木昌彦、ロナルド・ドーア編、NTTデータ通信システム科学研究所訳『国際・学際研究 システムとしての日本企業』(1995・NTT出版)』▽『ロナルド・ドーア著『「公」を「私」すべからず――やっぱり不思議な国日本』(1997・筑摩書房)』▽『ロナルド・ドーア著、藤井眞人訳『日本型資本主義と市場主義の衝突――日・独対アングロサクソン』(2001・東洋経済新報社)』▽『R・P・ドーア著、田丸延男訳『貿易摩擦の社会学――イギリスと日本』(岩波新書)』▽『山之内靖・永易浩一訳『イギリスの工場・日本の工場――労使関係の比較社会学』上下(ちくま学芸文庫)』▽『ロナルド・ドーア著、石塚雅彦訳『働くということ――グローバル化と労働の新しい意味』(中公新書)』▽『ロナルド・ドーア著『誰のための会社にするか』(岩波新書)』▽『ロナルド・ドーア著『金融が乗っ取る世界経済――21世紀の憂鬱』(中公新書)』