ナッタ(読み)なった(その他表記)Giulio Natta

デジタル大辞泉 「ナッタ」の意味・読み・例文・類語

ナッタ(Giulio Natta)

[1903~1979]イタリアの化学者。合成繊維ポリプロピレン合成成功したほか合成ゴム製法を発明した。1963年、ツィーグラーとともにノーベル化学賞受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ナッタ」の意味・読み・例文・類語

ナッタ

  1. ( Giulio Natta ジュリオ━ ) イタリアの化学者。高分子研究に従事。ポリプロピレンなどの合成繊維や、合成ゴムの製法を発明。一九六三年ノーベル化学賞受賞。(一九〇三‐七九

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナッタ」の意味・わかりやすい解説

ナッタ(Giulio Natta)
なった
Giulio Natta
(1903―1979)

イタリアの化学者。高分子の立体規則性概念を確立し、合成高分子工業の発展に大きな貢献をした。1963年ツィーグラーとともに「高分子物質の化学と技術における発見」によりノーベル化学賞を受賞した。西イタリア海岸のインペリアに生まれ、1924年ミラノ工科大学を卒業後、1933年パビア大学教授となり、1935年ローマ大学、1937年トリノ工科大学を経て、1938年より母校のミラノ工科大学の工業化学教授となる。X線による結晶構造の研究法を触媒高分子化合物に応用した。

 1938年重合反応の速度論的研究を行い、1953年モンテカチーニ社(後のモンテジソン社、現在のエジソン社)の援助で、ツィーグラー型触媒を用いてプロピレン、ブテンなどのオレフィンの重合によるポリマー重合体)を合成し、その結晶構造をX線回折で研究した結果、立体的に規則正しい配列をもった新しいポリマーを発見した。すなわち、触媒を選択することにより、触媒面で成長するポリマー鎖に順次モノマー単位が付加して、それぞれ性質の異なる各種の立体特異性を有するポリマーが調製される、ということの発見である。ナッタは夫人の提言に従って、アイソタクティック、シンディオタクティック、アタクティックなどの術語を導入してポリマーの立体配列を分類した。1957年にはアイソタクティックのポリプロピレン樹脂を工業化した。また、エチレンとプロピレンの共重合による合成ゴムの製法を発明した。ナッタの成功は、ツィーグラー触媒を改良して、トリアルキルアルミニウムと三塩化チタンからなる触媒(これをナッタ触媒という)を利用したからにほかならない。

[矢木哲雄]


ナッタ(Alessandro Natta)
なった
Alessandro Natta
(1918―2001)

イタリアの政治家。北イタリアのインペリアに生まれ、ピサの高等師範で文学を専攻。在学中に反ファシズム地下運動に参加し、終戦時に共産党に入党。1948年に下院議員に当選し、1956年には中央委員に選ばれる。以後、党の宣伝・教育部門で要職を歴任し、1966年以来、指導部員として、またベルリングエル書記長を補佐する書記として活躍、1983年の中央統制委員長を経て、翌1984年6月同書記長の死後その路線の継承者として1985年1月書記長に就任した。新書記長のもとで党は1986年に社会民主主義化を強める一方、両性間の平等といった新しい要求にも取り組んだが、政権獲得の明確な展望を欠いていたため国民の支持をしだいに失い、1987年の総選挙に続いて1988年の地方選挙ではとくに惨敗を喫した。1988年6月に病気を理由に書記長を辞任し、翌月オッケット副書記長が後任に選ばれた。ナッタは共産党低迷の象徴的存在とみられがちだが、オッケットやダレーマなどの次代の指導者を育成した功績は大きい。その後1991年の左翼民主党結成時には旧ベルリングエル派の指導者として活躍した。

[重岡保郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ナッタ」の解説

ナッタ
ナッタ
Natta, Giulio

イタリアの化学者.1924年ミラノ工科大学の化学工学科を卒業後,同学科で教べんをとった.1933年パビア大学の教授兼一般化学研究所所長となる.1935年ローマ大学教授,1936年トリノ工科大学の教授兼工業化学研究所所長を経て,1938年以降没年までミラノ工科大学の工業化学科の主任教授を務めた.X線および電子線回折による固体の研究からはじまり,この手法を触媒,さらに高分子に展開した.K. Ziegler(チーグラー)による有機金属触媒を用いるオレフィン類の重合を発展させ,新しいタイプの立体規則性ポリマーを見いだし,結晶構造中の配置をX線回折により決定した.また,ブタジエン重合やエテン-プロペン共重合による合成ゴムの製造法の発見や,不斉合成による光学活性ポリマー合成,結晶性交互共重合体の合成など,高分子科学の領域で新時代を画する業績を多数あげた.これらの業績により,1963年Zieglerとともにノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナッタ」の意味・わかりやすい解説

ナッタ
Natta, Giulio

[生]1903.2.26. インペリア
[没]1979.5.2. ベルガモ
イタリアの化学者。 1924年ミラノ工科大学で学位取得。パビア大学,ローマ大学,トリノ大学教授を経て,ミラノ工科大学教授 (1938) 。触媒,高分子化合物のX線,電子線回折による構造決定,チーグラー触媒を用いた各種単量体の重合による高分子化合物の合成,チーグラー触媒の改良,それらによって得られる高分子の立体規則性と性質の対応関係の解明など,近代高分子化学工業発展の基礎を築いた。特にポリエチレン,ポリプロピレンの開発と工業化は彼に負っている。 63年 K.チーグラーとともにノーベル化学賞受賞。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ナッタ」の意味・わかりやすい解説

ナッタ

イタリアの化学者。パビア大学,ローマ大学,トリノ工科大学教授を歴任して,1938年ミラノ工科大学教授。チーグラー触媒を用いての高分子重合法を改良し,ポリプロピレンの合成に成功,同時にX線による結晶構造の研究からチーグラー触媒で得られる高分子が立体規則性をもつことを示した。1963年K.チーグラーとともにノーベル化学賞。
→関連項目ポリプロピレン

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android