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不斉合成 ふせいごうせいasymmetric synthesis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

不斉合成
ふせいごうせい
asymmetric synthesis

通常の有機化学反応によって不斉炭素原子をもつ化合物を合成しても,光学活性は示さず,ラセミ体が得られるのみである。しかし光学活性体の影響のもとに合成を行うと,光学活性の物質を合成することができる。このような合成を不斉合成という。たとえばピルビン酸を光学活性なアルコールである l -メントールでエステル化したのち還元すると l -乳酸のメンチルエステルが d -乳酸より過剰に生成し,これを加水分解すると l -乳酸を過剰に含む生成物が得られる。生体内の有機化合物は,大部分が光学活性の物質であり,生体内では酵素により完全な不斉合成が行われている。実験室的に行われる不斉合成は一般に光学純度が低いが,最近は光学純度 90%をこす不斉合成も報告されている。また光学活性化合物を用いない不斉合成を絶対不斉合成といい,その例として,円偏光による光化学反応を用いた光学活性体の合成が報告されている。

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知恵蔵の解説

不斉合成

光学活性(光の偏光面を右、または左に回転させる性質)の化合物を人工的に合成する方法。自然界に存在する有機化合物の多くは光学活性体で、生物を構成するアミノ酸や糖質化合物も光学活性体。生体に作用する医薬品などもその鏡像異性体(実像と鏡像の関係にある異性体)間で生理作用が異なる場合があり、一方の鏡像異性体のみを合成することが強く望まれる。生体内では酵素が光学活性体を合成する際に重要な役割を果たすが、フラスコの中で人工的に一方の光学活性体を合成することを不斉合成という。2001年のノーベル化学賞を受賞した野依良治(現・理化学研究所理事長)の業績は、不斉触媒を用いた水素化反応に関するもので、超微量の光学活性化合物を用いるだけで、大量の光学活性体を合成することができる。

(市村禎二郎 東京工業大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

ふせい‐ごうせい〔‐ガフセイ〕【不斉合成】

光学異性体の一方を選択的に化学合成すること。円偏光の照射下で合成反応を進めたり、不斉触媒を用いて、右旋性または左旋性の化合物の一方を高い収率で合成することができる。野依良治は不斉な配位子をもつ錯体触媒に利用する有用な手法を発見し、平成13年(2001)、ウィリアムノールズ、バリー=シャープレスとともに、ノーベル化学賞を受賞した。

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百科事典マイペディアの解説

不斉合成【ふせいごうせい】

不斉炭素原子をもつ有機化合物を合成する場合,ふつう右旋性のものと左旋性のものの等量混合物(ラセミ体)ができる。しかし,光学活性の反応試剤や触媒を用いることにより,右旋性または左旋性の化合物の一方をより多く生成させることができる。

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世界大百科事典 第2版の解説

ふせいごうせい【不斉合成 asymmetric synthesis】

通常,有機化合物の合成においては,ラセミ体が生成するが,なんらかの不斉誘起を起こさせて,光学活性体の一方を優先的に生成させる合成法。天然に存在する有機化合物はほとんどの場合,光学活性体として存在するので,その合成には不斉合成が必要不可欠となる(ラセミ体の光学分割は多くの場合,きわめて困難である)。不斉合成において不斉誘起を起こさせるには,なんらかの不斉源が必要であり,最近ではさまざまな反応において不斉収率(不斉誘起がどの程度起こったかを示す)が80%以上のものが開発されているので,それらを表にまとめた。

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大辞林 第三版の解説

ふせいごうせい【不斉合成】

光学異性体の一方が優位に生成するような化学合成のこと。 〔光学異性体は、生物にとっては、どちらか一方のみが機能、または、毒性をもつことが多い〕 → 光学異性

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不斉合成
ふせいごうせい
asymmetric synthesis

歴史的には、不斉な分子に新しく不斉原子を導入する合成反応において、2種のジアステレオマーが異なる収率で生ずる場合をいったが、現在では不斉原子をもつ化合物の対掌体の一方を高い収率で選択的に合成することをいう。後者のことを絶対不斉合成ともいう。
 前者では、すでに存在する不斉中心がジアステレオマー生成反応速度に影響を与え、その結果として収率に差が現れる。後者では、一般に不斉でない化合物から不斉な化合物を合成すれば、対掌体の対が同収率で生じてラセミ体を得るが、偏光照射下あるいは不斉な触媒を利用することによって、一方をより高い収率で得ることができる。地球上の生命体を構成するアミノ酸や糖は、一方の対掌体系列に属する絶対配置をとるので、絶対不斉合成は生命科学、薬学、食品科学における重要な研究課題となっている。[岩本振武]

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