日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナポリ派」の意味・わかりやすい解説
ナポリ派
なぽりは
scuola napolitana
イタリアのナポリで活躍した画家の一派。ナポリでは14世紀から優れた芸術活動がみられるが、ずっと他の都市の美術家に依存していた。ナポリ出身の画家が出て、独自の画派が形成されたのは、バロック時代になってからである。このナポリ絵画の発展に大きな役割を果たしたのがカラバッジョであった。彼は1606~07年と09年にごく短い期間滞在したにすぎないが、その影響は大きく、カラッチョロG. B. Caracciolo(1570/75―1637)、スペイン生まれのホセ・デ・リベラ、スタンツィオーネMassimo Stanzione(1585―1656)といった、いわゆるカラバッジョ派の画家が育った。彼らはカラバッジョ風の写実描写と明暗のコントラストを強調した画法をもとに、ナポリらしい体質を感じさせる独自の絵画を描いた。とりわけスペインの民衆的感覚を反映したリベラの写実的作品は高く評価されている。
このほかには、叙情的でやや女性的な作風で際だつカバッリーノBernardo Cavallino(1616―56)や、ロマン主義的風景画で後世に大きな影響を与えたローザSalvator Rosa(1615―73)が重要である。さらに、これらの画家たちのあとに優れたフレスコ装飾画家ルカ・ジョルダーノLuca Giordano(1634―1705)が出た。彼は「早描き」で知られ、フィレンツェやマドリードをはじめ各地で活躍した。そして、ナポリ・バロック絵画の最後の巨匠となったのがソリメーナFrancesco Solimena(1657―1747)である。彼ののち、つまり18世紀の後半以降はめぼしい画家は出ていない。なお、ルカ・フォルテLuca Forte(17世紀前半に活躍)やジュゼッペ・レッコGiuseppe Recco(1634―95)らによるナポリ派の静物画も注目に値する。
[石鍋真澄]