ナンバンギセル(読み)なんばんぎせる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナンバンギセル」の意味・わかりやすい解説

ナンバンギセル
なんばんぎせる / 南蛮煙管
[学] Aeginetia indica L.

ハマウツボ科(APG分類:ハマウツボ科)の一年草。オモイグサ(思草)ともいう。日本ではススキへの寄生が多いが、チガヤサトウキビミョウガなどにも寄生する。茎は短く地下にあり、花柄は高さ15~30センチメートル。8~9月、淡紅紫色で筒形の花を1個横向きまたは下向きに開く。花冠は長さ約3センチメートルで先端は5裂し、裂片の縁(へり)は全縁である。萼(がく)は舟形で、先は鋭くとがる。果実は卵形、多数の小さな種子があり、寄主の根に付着して発芽する。丘陵から山地ススキ草原、畑、ときに疎林の中に生え、日本全土、および中国、東南アジア、インドに広く分布する。名は、花柄から横向きにつく花の形が西洋の喫煙パイプに似ることからついた。「思草」は『万葉集』にも詠まれ、花がうなだれて咲き、その形が物思いげにみえることによる。

 ナンバンギセル属は、花柄は長く、花は1個頂生し、萼は鞘(さや)状で下側が深く裂ける。イネ科やカヤツリグサ科などの植物に寄生する。アジアの温帯から熱帯に3、4種、日本に2種分布する。

[高橋秀男 2021年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナンバンギセル」の意味・わかりやすい解説

ナンバンギセル(南蛮煙管)
ナンバンギセル
Aeginetia indica

ハマウツボ科の一年草。アジア東部の熱帯から温帯に広く分布し,日本各地の草原に生じる。ススキ,ショウガなどの根に寄生し,全体に葉緑体を欠き,茎は短くほとんど地上に出ない。夏に,高さ 20cmぐらいの黄褐色の花茎を出し,舟形で赤褐色の萼をもつ長さ3~4cm,径 1cmほどの淡紫紅色の花冠の花が横向きに咲く。花後に卵球形の 蒴果を生じ,大量の細かな種子ができる。西日本の暖地小笠原諸島,沖縄などには本種に似ているが大型のオオナンバンギセル A. sinensisがあってイネ科やカヤツリグサ科の草本に寄生する。花の形からこの名がつけられた。

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