アメリカ等における、医師の指示がなくとも一定の範囲の診断・治療を行うことができる専門看護師。NPと略称される。1960年代の深刻な医師不足や貧困層へのヘルスケアの必要性等からアメリカで生まれた資格であり、大学院の修士課程や博士課程で専門教育を受け、高度な知識と技術を学んだ「上級看護実践者」として位置づけられている。決められた特定の薬の処方を行ったり、医師と共同で医療行為を行うほか、単独で開業し、プライマリケア(初期診療)を担うこともできる。アメリカのほか、カナダ、オーストラリア、イギリス、韓国などでも同様の資格制度が導入されているが、2021年(令和3)現在、日本では導入されていない。
日本においては、アメリカのナース・プラクティショナー制度を参考として、2008年(平成20)に一般社団法人日本NP教育大学院協議会のNP教育課程が大学院修士課程に設置され、2019年4月時点で10校、修了者は400名になった。しかしながら現在のNP教育課程修了者は、保健師助産師看護師法が定める特定行為を実施することができる看護師であり、特定行為は、あくまで「医師の指示のもとでの診療の補助」を超えない範囲であるため、アメリカ等のナース・プラクティショナーとは異なっている。日本看護協会は、今後、少子高齢化がさらに進み医療のニーズがピークを迎えると推測される2040年までに「ナース・プラクティショナー(仮称)制度」を創設する必要があるとし、要望書を提出する等の活動を行っている。同協会はナース・プラクティショナー制度の導入により、今後の少子超高齢多死社会において、質の高い医療を効率的かつ効果的に提供できる医療提供体制の構築につながるとしている。
[横山美樹 2021年7月16日]
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