ナーランダ遺跡(読み)ナーランダいせき(英語表記)Nālandā

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナーランダ遺跡」の意味・わかりやすい解説

ナーランダ遺跡
ナーランダいせき
Nālandā

インド北東部,ビハール州中部のビハールシャリーフ南西にある仏教遺跡ナーランダの歴史は仏教開祖である釈迦ジャイナ教の開祖であるマハービーラの生きた時代に始まる。5世紀のグプタ朝時代に仏教の那爛陀寺(ならんだじ)が設けられ,7世紀に玄奘義浄が留学して仏教教理を学び,中国,東南アジア諸国からも多数の僧が留学した。12世紀末頃にイスラム教徒に侵略されるまでナーランダはインドの後期仏教の密教学(→密教)の中心地であった。1915年以来インド考古局の発掘により,僧院や寺院の遺構が明らかにされ,2016年世界遺産の文化遺産に登録された。出土遺品はグプタ朝からパーラ朝にわたるが,特にパーラ朝の密教彫像が優れている。パーラ朝美術を代表する密教美術の特色は,尊像の種類が著しく増加したことと,各尊の像容が厳密に定められたことである。文献資料としては成就法を集録した『サーダナマーラー』が重要。最も種類の多い尊像は観音系(→観世音菩薩)で,文殊系(→文殊菩薩),多羅系(→多羅菩薩)がこれに続く。明王部では降三世明王ヤマーンタカ(→大威徳明王),ヘールカ,天部ではジャンバラ(宝蔵神),マハーカーラ(→大黒天),マリーチー(→摩利支天)が彫像として制作された。彫像の体躯は細く華奢で,全体的にはマンネリズムが感じられる。ナーランダの優れた遺品としては遺跡の近くに立つマリーチー像,大塔基壇側壁を飾る観音立像などがあげられる。

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