明王(読み)ミョウオウ

デジタル大辞泉 「明王」の意味・読み・例文・類語

みょう‐おう〔ミヤウワウ〕【明王】

大日如来の命を奉じ、怒りの相を表し、悪魔降伏ごうぶくして仏法を守護する諸尊五大明王など。特に、不動明王をさす。
智慧の王、すなわち真言しんごんのこと。

めい‐おう〔‐ワウ〕【明王】

すぐれた、かしこい王。明君。

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精選版 日本国語大辞典 「明王」の意味・読み・例文・類語

みょう‐おうミャウワウ【明王】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( [梵語] vidyā-rāja の訳 ) 仏語。
      1. (イ) 真言のなかでもっともすぐれたもの。真言のなかの王。〔菩提場所説一字頂輪王経‐五〕
      2. (ロ) 転じて、真言を宣布する諸尊をいう。如来教令(きょうりょう)をうけて衆生を調伏する諸尊で、怒りの相を表わす。五大明王・八大明王などを数える。〔書言字考節用集(1717)〕 〔真偽雑記‐一三〕
    2. 聰明な君子。賢い天子、天皇。めいおう。
      1. [初出の実例]「是偏に明(ミャウ)王慈恵の恩幸なれば」(出典太平記(14C後)一三)
  2. [ 2 ] 五大明王、中でも特に不動明王をいう。
    1. [初出の実例]「実に、法花の力、明王の験新た也」(出典:今昔物語集(1120頃か)一三)

めい‐おう‥ワウ【明王】

  1. 〘 名詞 〙 すぐれてかしこい王。聰明な君主。みょうおう。
    1. [初出の実例]「無為無事明王代、九月九日嘉節朝」(出典:菅家文草(900頃)二・重陽日、侍宴紫宸殿、同賦玉燭歌)
    2. 「めいわうの御代にいでくまじきことども也」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    3. [その他の文献]〔書経‐周官〕

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改訂新版 世界大百科事典 「明王」の意味・わかりやすい解説

明王 (みょうおう)

明呪(みようしゆ)の中の王(最も優れているもの)との意味で,真言(しんごん)の別称として用いられるが,一般には仏像を大別したとき如来・菩薩の次に来る分類名として使われることが多い。明王とは,仏(如来)が通常の姿でいては教化し難い衆生を,屈伏させて教化するために忿怒(ふんぬ)の姿に変身したものに特に命名したもので,密教特有の尊像である。単独に信仰された明王としては不動明王愛染明王大元帥(たいげんすい)明王孔雀明王,烏枢渋摩(うすしま)明王(烏蒭沙摩(うすさま)明王)などがあり,数尊を一組として考えられたものとしては五大明王,八大明王がある。五大明王は,五仏(金剛界では大日如来,阿閦如来,宝生(ほうしよう)如来,無量寿如来,不空成就如来)が忿怒尊として現れた不動明王,降三世(ごうさんぜ)明王,軍荼利(ぐんだり)明王,大威徳明王金剛夜叉明王であるが,天台系の五大明王では金剛夜叉明王の代りに烏枢渋摩明王を加える。八大明王は,金剛夜叉を加える五大明王に烏枢渋摩明王,無能勝(むのうしよう)明王,馬頭(ばとう)明王の8尊とする説と,八大菩薩(金剛手菩薩,妙吉祥菩薩,虚空蔵菩薩,慈氏菩薩観自在菩薩地蔵菩薩,除蓋障菩薩,普賢菩薩)から出現した降三世明王,大威徳明王,大笑明王,大輪明王,馬頭明王,無能勝明王,不動明王,歩擲(ぶちやく)明王の8尊とする説とがある。

 五大明王は平安時代以来信仰され,多数の作例が遺る。五大明王を本尊として安置する五大堂も建立されたが,八大明王は日本では広まるに至らず,造像例は遺らず白描図像に見られるのみである。明王像の中では孔雀明王だけが菩薩形に表されるが,それ以外の明王像は忿怒尊という言葉がただちに明王像を連想させるほど,怒気を帯びた厳しい表情,頑迷な心を打ち砕こうとする激しい姿勢,これらを強調するように燃え上る火焰光背などを必ず表現している。こうした動的な尊像表現が求められたことが,造像活動に刺激を与えたものと推測されるが,これら明王像の中には,仏教美術史の上で注目すべききわめて優れた作品が多数含まれている。
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百科事典マイペディア 「明王」の意味・わかりやすい解説

明王【みょうおう】

仏像のうちで如来菩薩(ぼさつ)の次に来る分類名。非常に強い力をもち,忿怒(ふんぬ)の形相で悪を打ち砕く姿が多い。愛染明王不動明王,孔雀明王,大元帥明王などのほか,数尊を一組として考えられたものに五大明王(不動明王,降三世(ごうさんぜ)明王,軍荼利(ぐんだり)明王,大威徳明王,金剛夜叉明王),八大明王がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明王」の意味・わかりやすい解説

明王
みょうおう
Vidyā-rāja

呪文の王者の意味をもつ,もろもろの悪魔を調伏し,仏法を守る守護神。大日如来の化現の一つとされ,教化しがたい衆生を折伏して救済しようとするため,ほとんど忿怒の相である。明王部の諸尊には,不動明王などの五大明王のほかに大元帥明王,愛染明王などがあり,孔雀明王だけは慈悲相で表現される。

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世界大百科事典(旧版)内の明王の言及

【白蓮教】より

…韓氏は韓山童の祖父の代から白蓮会を組織し,韓山童の時に至って,〈天下大いに乱れ,弥勒仏下生す〉という口号(スローガン)を掲げ,劉福通らと結んで反乱を起こした。韓山童は早期に官憲に捕らえられたが,彼の子韓林児は劉福通に擁され,小明王と称し,亳(はく)州において宋国を立て元号を竜鳳と定めた。この〈明王〉という称号は,あるいは仏教に由来するものとされ,またマニ教に由来するものともされる。…

【仏像】より

…将来に仏陀となる弥勒(みろく)菩薩の起源は古く,大乗仏教では観音,勢至(せいし),文殊,普賢,日光,月光,地蔵など,密教では金剛薩埵(さつた),五秘密,普賢延命,准胝(じゆんてい),多羅,虚空蔵などの多数の菩薩を生んだ。また不動その他の明王は忿怒(ふんぬ)の形相をした密教特有の尊像で,発生的にはヒンドゥー教のシバ神と密接に関連する。また,古くから仏教にとり入れられたインドの神々など仏法を守護する異教の神々を天と総称し,梵天,帝釈(たいしやく)天,吉祥(きつしよう)天,弁才天,竜王,夜叉,訶梨帝母(かりていも)(鬼子母(きしも)神),摩利支(まりし)天,大黒天,聖天など,また四天王,八部衆,十二天などの一群の神々がある。…

※「明王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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