市松模様(読み)イチマツモヨウ

デジタル大辞泉 「市松模様」の意味・読み・例文・類語

いちまつ‐もよう〔‐モヤウ〕【市松模様】

碁盤目状の格子の目を色違いに並べた模様。江戸中期、歌舞伎俳優佐野川市松がこの模様のはかまを用いたことに始まるという。石畳いしだたみあられ。市松文様。いちまつ。

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精選版 日本国語大辞典 「市松模様」の意味・読み・例文・類語

いちまつ‐もよう‥モヤウ【市松模様】

  1. 〘 名詞 〙 地紋一種。黒と白を交互に並べた碁盤目の模様。最近は、色物長方形のものなどもいう。市松。石畳(いしだたみ)
    1. [初出の実例]「村長の家は黒と白の市松模様の壁をめぐらせて」(出典:芽むしり仔撃ち(1958)〈大江健三郎〉八)

市松模様の語誌

→「いちまつぞめ(市松染)」の語誌

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改訂新版 世界大百科事典 「市松模様」の意味・わかりやすい解説

市松模様 (いちまつもよう)

石畳,霰(あられ)などともいわれ,幾何学模様のもっとも簡単なものとして洋の東西を問わず古くから種々のものの意匠模様に用いられている。ことに染織品の模様としては,これの土台になる裂地(きれじ)の構造が,直交する経緯(たてよこ)の糸で組織されたものであるから縞とともにきわめて織物に自然な模様として,その発生はおそらく原始時代にさかのぼるものであろう。日本でも古く古墳時代の埴輪(はにわ)の服装にこの模様がみられ,7~8世紀ころの法隆寺正倉院の染織品にも織模様として多く用いられている。中世の装束の表袴(うえのはかま)の〈窠に霰(かにあられ)〉もこれであり,下って近世になると帯や着物の模様として織にも染にもさかんに用いられた。市松という名称は,1741年(寛保1)佐野川市松という俳優が江戸中村座の芝居で《高野心中》の小姓粂之助の役にこの石畳模様の袴を用いて人気を博し,大いに流行したことから起こったといわれる。
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百科事典マイペディア 「市松模様」の意味・わかりやすい解説

市松模様【いちまつもよう】

碁盤の目形に黒と白,黒と赤などの入れ違いを配列した模様。古くから服飾品をはじめ工芸品や建築に応用される。もとは石畳と称したが,1741年に歌舞伎役者佐野川市松が舞台衣装の袴(はかま)の模様に用いて以来,市松と呼ばれるようになった。
→関連項目幾何学文チェック

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世界大百科事典(旧版)内の市松模様の言及

【佐野川市松】より

…12歳の初舞台のときからその愛らしさが人気となり,41歳で没するまで,美貌の若衆方,女方役者として活躍した。代表的な舞台は,1741年(寛保1)江戸中村座で演じた《高野心中》の粂之介で,その衣装に用いた石畳(いしだたみ)の模様は〈市松模様〉として今日に残る。〈市松(いちま)人形〉の名も顔を似せて作ったことに由来する。…

【チェック】より

…市松模様,格子縞,そのほか線が直角に交差した格子柄模様の総称。一般に先染めした経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り出して作るが,プリントで表したものもある。…

※「市松模様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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