ニタリクジラ(読み)にたりくじら(英語表記)Bryde's whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニタリクジラ」の意味・わかりやすい解説

ニタリクジラ
Balaenoptera edeni; Bryde's whale

クジラヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科ナガスクジラ属。最大体長約 15.5m。最大体重 20~25t。出生体長は 4m程度。体色は背部が黒色,青黒色または黒褐色で腹部が白色である。背と腹の境はねずみ色で波形やぼかし模様を呈する。体型は流線形で細長いが,イワシクジラよりずんぐりしている。噴気孔は2個で,噴気は高さ3~5mと推測される。頭部は扁平で幅が狭くとがってV字状を呈し,吻端から噴気孔にかけて3本の稜線がある。背鰭 (せびれ) は体の後方3分の2に位置し,比較的大きく,直角二等辺三角形状で,先端は鈍く,後方に垂れる。畝 (うね) は 40~70本あり,臍 (へそ) まで達する。くじらひげは口内の上顎上面に片側で 250~379枚あり,最長 50cm程度である。ひげの板状部はやや青みを帯びた灰色で,繊毛部はきわめて粗く,ベージュ色または茶ねずみ色である。通常1~2頭で行動することが多いが,索餌場では 10~20頭の群れをなすことがある。カツオの群れがしばしば付随する。イワシサンマ等の群集性魚類を主食とするが,浮遊性小甲殻類も食べる。口を開けて突進し飲み込んで捕食する。熱帯から亜熱帯に生息し,両半球の緯度 40゜をこえて極地方回遊することはない。外洋性のものと沿岸性のものがいる。 1988年商業捕鯨停止まで,日本沿岸で捕獲されていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニタリクジラ」の意味・わかりやすい解説

ニタリクジラ
にたりくじら
Bryde's whale
[学] Balaenoptera edeni

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目ナガスクジラ科のヒゲクジラ。暖海性のクジラで、北緯40度と南緯40度の間の、水温20℃以上の海に広く分布する。イワシクジラの近縁種であるが、吻(ふん)の上面の左右両側に吻端から鼻孔付近にかけて各1条の隆起線があること、畝(うね)が長く先端がへそに達していること、くじらひげが短くて幅が広いこと、ひげ毛が太いことなどで、外形的に区別される。体長もイワシクジラよりやや小さく、最大14メートルぐらいである。ニタリクジラはかつて南アフリカ沿岸にだけ生息するとされていたが、第二次世界大戦後、小笠原(おがさわら)諸島周辺で発見され、北太平洋にも広く分布することが判明した。国際捕鯨委員会は1970年に捕鯨条約の付表を修正して、本種とイワシクジラを別種として扱うこととした。南アフリカ沿岸では沿岸型と遠洋型の二つの型があり、外形的にも生態的にも、若干の差が認められている。

大村秀雄

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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