イワシクジラ(読み)いわしくじら(英語表記)sei whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワシクジラ」の意味・わかりやすい解説

イワシクジラ
Balaenoptera borealis; sei whale

クジラヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科ナガスクジラ属。体長約 18m。大きいものは体重約 30t。出生体長は 4.5~4.8m。体色は背部が黒色,青黒色あるいは黒褐色で腹部が白色である。背と腹の境はねずみ色で波形や不規則なぼかし模様を呈する。胸鰭 (むなびれ) と尾鰭の裏側はねずみ色。体型は流線形であるがナガスクジラより細長い。噴気孔は2個で,噴気は細長く高さ5~8mである。頭部は扁平で幅が狭くとがっておりV字状を呈し,吻端から噴気孔にかけて稜線がある。背鰭は体の後方3分の2に位置し,比較的大きく,背の高い直角三角形状で先端はとがる。畝 (うね) は 32~60本あり,臍 (へそ) までは達していない。くじらひげは口内の上顎上面に片側で 219~402枚あり,長さ約 60cm,幅約 25cmである。板状部が黒色で繊毛部の内側が白色であるため,ひげの列は内側からは白く,外側からは黒くみえる。2~5頭の群れで行動する。ナガスクジラ科中最速で泳ぐ。餌に突進し飲み込んで捕食するが,セミクジラのように泳ぎながら口を開き餌をこし取って捕食することもできる。おもにオキアミ類等の浮遊性甲殻類を好むが,その名が示すようにイワシニシンイカナゴ等の群集性魚類も捕食する。出産期は冬,繁殖場は両半球の低緯度海域である。外洋性。両半球の温帯から極域に出現するが,中緯度の温帯に分布がややかたよる。絶滅危惧種

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワシクジラ」の意味・わかりやすい解説

イワシクジラ
いわしくじら / 鰮鯨
sei whale
[学] Balaenoptera borealis

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目ナガスクジラ科のヒゲクジラ。体はほっそりした紡錘形で、鎌(かま)形の背びれがある。背側は黒く腹側は白いが、中間にぼかし模様がみられる。顎胸(がくきょう)部の体軸に沿って走る約60本の畝(うね)(筋状の溝)はへそまでは達しない。口蓋(こうがい)に黒色のくじらひげ板が櫛(くし)状に伸びる。出生時の体長は4.4メートルで、約9歳で成熟。成体の体長は平均15~16メートルに達し、体重は16~20トンになる。雌は雄よりやや大きい。世界の大洋に分布し、氷海や付属海には入らない。動物プランクトンの橈脚(とうきゃく)類を好み、群集性魚類も食べる。捕鯨の対象となっていたが、1986年(昭和61)から国際捕鯨委員会(IWC)により、全世界で捕獲が禁止されている。生息数は世界全域で約2万4000頭以上と推定される。

[大隅清治]

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