改訂新版 世界大百科事典 「ニチニチソウ」の意味・わかりやすい解説
ニチニチソウ (日々草)
Madagascar periwinkle
Cape periwinkle
Vinca rosea L.(=Lochnera rosea (L.) Reichb., Catharanthus roseus (L.) Don)
原産地はマダガスカルといわれているが,現在では熱帯地方に広く栽培,帰化しているキョウチクトウ科のやや木本性をおびた多年草。日本には1780年ころ(安永~天明)に渡来している。改良種は花壇や鉢植えに,また切花として広く栽培されている。草丈30~60cm。葉は長楕円形で対生,光沢があり,夏には葉腋(ようえき)に淡紫紅色,白色,白に赤目などの2個の合弁花をつける。花冠は5裂し,花筒は長い。蒴果(さくか)は細長く,熟せば縦に裂開して黒色の種子が飛散する。日本では春まき一年草として取り扱い,夏,秋の花壇や鉢ものとして栽培するが,株を温室で保護すると越冬して翌年も開花する。改良種には切花用の高性種や,鉢や花壇用の矮性(わいせい)種がある。根はやや多肉で,高温期の移植,多湿地,過度の灌水では根腐れを起こしやすい。種子は果皮の裂開とともに飛び散るから,採種は摘取法によるか,ビニルマットを敷き,掃き集める方法をとる。ビンクリスチンvincristineなどのアルカロイドを含有し,細胞分裂阻害剤となり,臨床医学では抗癌剤として用いている。また古くは西洋でビール造りのホップの代用とされ,霊草として亡霊よけや媚薬(びやく)にも使われた。西洋では次に述べるツルニチニチソウが普通種であり,つるを伸ばして物に巻きつき他を圧倒する姿が,こうした魔よけの信仰に結びついたらしい。一説に,英名はラテン語pervinco(圧倒するの意)から派生したともいう。花ことばは〈楽しい思い出と揺るぎない献身〉。
ツルニチニチソウV.major L.(英名large periwinkle)はツルギキョウとも呼ばれ,南ヨーロッパ,北アフリカ原産の多年草で,株際から四方に長さ1~2mのつるがのび,卵円形の葉をつける。この茎は節からほとんど発根しないでのびる。春には株際から花茎が直立し,高さ30~40cmとなり,頂部に美しい紫藤色の花を腋生する。花冠は5深裂し,花筒は長い。渡来は明治中期以前。斑入品種のフクリンツルニチニチソウvar.argenteimarginata Hort.は最近,つり鉢や花壇に利用されるようになった。ヒメツルニチニチソウV.minor L.(英名common periwinkle,myrtle)は,ツルニチニチソウに似てはいるが,茎葉,花などがはるかに小型の常緑つる性多年草。原産地はヨーロッパ中部。花は4~7月に咲き,径2cm,花色は暗青色または暗紫色。匍匐(ほふく)するつるの各所で発根するのがツルニチニチソウと違っている。ツルニチニチソウもヒメツルニチニチソウも繁殖は開花後の株分けによる。花壇,つり鉢,ロックガーデンによく,場所によっては地被植物(カバープラント)として利用できる。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報