化学辞典 第2版 の解説
ニトロプルシドナトリウム
ニトロプルシドナトリウム
sodium nitroprusside
Na2[Fe(CN)5NO]・2H2O(297.95).ペンタシアノニトロシル鉄(Ⅲ)酸ナトリウムともいう.黄血塩を希硝酸に溶かして熱したのち,炭酸ナトリウムで中和して得られる.空気中で安定な深赤色の結晶.∠Fe-N-O180°,Fe-N間の結合は三重結合に近い.水に易溶,アルコール類に可溶.ニトロプルシドイオンの反応は非常に多様であるが,代表的なものをあげると,
(1)硫化物イオンとの反応は敏感で,赤色中間体を経て最終的に菫(きん)紫色錯イオンを形成する.これにより,S2-,SH-の検出に用いられる.
(2)反応に無関係な電解質(NaCl,KClなど)の存在下で,SO32- とを加えると深赤色が強まる(Boedecker反応).
(3)溶液は直射日光によりまずNO,[Fe(CN)5H2O]3- となり,最終的にはベルリンブルー(紺青)とHCN,NOに光分解する.弱光では発色しないが,S2O32-やアニリンを共存させると青色になる.中心鉄イオンの酸化状態は,NOが不対電子をもつことと,錯体全体が反磁性であることを考えると,[Fe2+(CN)5NO+]2- と考えられ,赤外吸収スペクトルやメスバウアー効果の研究結果も Fe2+ を支持している.したがって,この錯塩の名称は,ニトロシルよりもむしろニトロシリウムであり,プルシ塩よりもプルソ塩とよぶほうが正しい.[CAS 13755-38-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報