ニューコメン(読み)にゅーこめん(英語表記)Thomas Newcomen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューコメン」の意味・わかりやすい解説

ニューコメン
にゅーこめん
Thomas Newcomen
(1663―1729)

イギリスの技術者蒸気揚水機関発明者。デボンシャーダートマス生まれ。鍛冶(かじ)屋および鉄商を営んでいたが、若いときから蒸気機関の製作に熱中した。同郷のセーベリーも同時期に蒸気機関をつくり、蒸気の凝結で密閉容器中に真空をつくった。一方、パパンは1690年の著書で、シリンダーの中でピストンの下に空気ポンプにより真空をつくる提案をした。ニューコメンはこの二つを結び付け、シリンダーの中のピストンの下に蒸気の凝結で真空をつくることを着想した。1705年から試作を開始し、友人でダートマス出身のガラス職人キャリーJohn Calley(1663―1717)の助けを得た。1712年スタッフォードシャーのダッドリー城に初めて実用化した機関を建造した。

 ニューコメン機関は大気圧だけで水を吸い上げ、蒸気は真空をつくるためにだけ用いるので大気圧機関ともいう。この機関は揚水用としてとくに鉱山に普及したが、ニューコメン自身は発明から利益を得ようとは考えなかった。彼の死後、1733年に特許は満期となり、ワット機関が出現するまでの60年間以上にわたって普及し、イギリスの石炭産業発達に大きな役割を演じた。ニューコメン機関を改良し、この形式性能極限まで高めたのはスミートンであった。

山崎俊雄

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニューコメン」の意味・わかりやすい解説

ニューコメン
Newcomen, Thomas

[生]1663.2.28. デボン,ダートマス
[没]1729.8.5. ロンドン
イギリスの技術者。 1705年 J.コーリーとともに高圧蒸気を使わない大気圧で動作する蒸気機関を発明。 12年,第1号機を完成従来の T.セーベリの機関に比べて強力な実用性をそなえ,25年頃から鉱山の揚水用ポンプの動力源として,74年に J.ワットの蒸気機関が出現するまでよく使われた。

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