日本大百科全書(ニッポニカ) 「スミートン」の意味・わかりやすい解説
スミートン
すみーとん
John Smeaton
(1724―1792)
イギリスの技術者。リーズに近いオースソープに生まれ、幼時から機械の才を示した。1750年自ら工場を設立して航海・天文用具の製作を行う一方、機械に関する報告を王立協会に提出し、1753年会員に選ばれた。翌1754年ベルギーとオランダを旅行して水路を見学、その経験を自国の水路改修などに生かした。1756~1759年エディストン灯台の再建に従事した際、古代ローマ以来忘れられていた水硬性の強い石灰モルタルを使用、これは19世紀初頭の人工セメント工業の発端となる。灯台のほか、橋、運河、港湾の工事に関係し、人工の港ラムズゲートの工事も完成させた。1771年これらの建設事業に参加した人々が自主的に結集してシビル・エンジニアと自称するようになり、その指導者と目され、この組織に属する人たちはスミートニアンとよばれた。
水車の設計と改良を科学的に行い、模型を自作し精密な試験を行った。風車、とくに翼について研究し、論文「車を回す水および風の自然力に関する実験的研究」を発表した(1759)。またニューコメン機関の効率を倍加し、性能をこの形式での極限にまで高めた。さらに製鉄技術にも貢献し、1761年キャロン製鉄所にシリンダー送風機を導入、またシリンダーを削るための中ぐり盤の発明(1769)もある。土木、機械など多方面に業績を残した技術者であり、「18世紀のレオナルド・ダ・ビンチ」と評されることもある。
[山崎俊雄]