日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーリー」の意味・わかりやすい解説
コーリー
こーりー
Elias James Corey
(1928― )
アメリカの有機化学者。マサチューセッツ州メシュエンに生まれる。1948年マサチューセッツ工科大学卒業。同大学に進学し、ペニシリン合成を研究する。2年で博士論文を書き上げ、1950年同大学で博士号を取得。その後イリノイ大学講師に就任。1956年27歳にしてイリノイ大学教授となる。1959年ハーバード大学教授に就任。
1960年代に有機合成理論を仔細に分析し、最終生成物である化合物から一つ一つ反応をさかのぼっていく「逆合成法」を確立した。これにより、複雑な化合物でも、単純で安い原料を使って大量に合成することが可能となり、医薬の分野が飛躍的に進歩した。コーリーがこの方法を用いて合成した天然有機化合物は、プロスタグランジンやトロンボキサンなどのエイコサノイド、植物ホルモンのジベレリン酸をはじめ数百種類にも及んでいる。この功績により、1990年にノーベル化学賞を受賞した。その後は、酵素のように触媒的に働く合成化合物、分子ロボットなどの研究を続けている。2004年にはインフルエンザ治療薬「タミフル」(一般名リン酸オセルタミビル)の短工程での合成法を開発。これもコーリー自らがつくりだした不斉触媒(不斉合成に利用される触媒)を使った人工合成だった。
[馬場錬成]