ネグサレセンチュウ(読み)ねぐされせんちゅう(英語表記)rootlesion nematode

改訂新版 世界大百科事典 「ネグサレセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネグサレセンチュウ
root-lesion nematode

プラティレンクス科Pratylenchinae亜科のセンチュウ総称で,やや冷涼な地帯に多いキタネグサレセンチュウPratylenchus penetrans,温暖な地帯に多いミナミネグサレセンチュウP.coffeaeなど農業上重要な種類が多い。サトイモ,ダイコン,ゴボウレタス,イチゴ,クローバー,チャ,その他多くの作物が被害を受け,寄主範囲が広いため作物の作り方を変えたりして行う防除はしにくい。幼虫成虫とも雌雄同形で糸状を呈し全長0.6mm前後,ともに感染力をもっている。根に侵入したセンチュウは柔組織内を移動しながら栄養分を摂取し,発育する。このため根の組織は破壊されて褐変し,部分的には斑点しみとなり,さらに進めば根腐れ症状を起こす。雌成虫は根の組織内に約30個の卵を産む。卵は条件がよければすぐに孵化ふか)し,寄生生活を繰り返す。根が老化したり腐ったりするとセンチュウは土壌中に出て,新しい根を求めて移動する。土壌中のセンチュウ密度を高めないために,輪作マリーゴールドなどの対抗植物を栽培するとよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネグサレセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネグサレセンチュウ
ねぐされせんちゅう / 根腐線虫
rootlesion nematode
[学] Pratylenchus spp.

袋形(たいけい)動物門線虫綱の1属の総称。世界的に広く分布する重要な植物寄生線虫の一群で、雌雄ともに体長0.5~0.8ミリメートルで細長い。イネ科牧草に被害を及ぼす草地線虫meadow nematodeとして古くから知られていた。線虫は根の組織内を移動しながら産卵増殖し、根を壊死(えし)崩壊させ、植物を枯死させる。線虫が被害を及ぼす植物(寄主範囲)は広く、ジャガイモ塊茎、サツマイモ、サトイモ、キク、イチゴ、モモ、チャ、スギ苗などで被害が目だつ。50種近くのうち、日本では、キタネグサレセンチュウP. penetransが関東地方以北に、ミナミネグサレセンチュウP. coffeaeが関東地方以南に、チャネグサレセンチュウP. loosiがチャ栽培地帯にそれぞれ広く分布するほか、約10種が知られている。

一戸 稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネグサレセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネグサレセンチュウ
Pratylenchus; root lesion nematode

袋形動物門線虫綱チレンクス目ホプロライムス科ネグサレセンチュウ属の種類の総称。体長 0.5~0.8mm,体幅 0.02mm。植物の根に内部寄生し,根の組織内を移動しながらくされ症状を引起す。たとえばミナミネグサレセンチュウ P. coffeaeはサツマイモやジャガイモに,チャネグサレセンチュウ P. loosiは茶,ナシ,ミカンなどに寄生して,ともに大害を与えている。

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