日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェイディアス」の意味・わかりやすい解説
フェイディアス
ふぇいでぃあす
Pheidias
生没年未詳。古代ギリシアの彫刻家。紀元前500年から前490年ごろアテネに生まれたと思われる。活躍期は前460年から前430年ごろ。「円盤投げ」の作者ミロンと同様に、アルゴスの彫刻家ハゲライダス(アゲラダスともいう)に学び、のち青銅の「アテナ・プロマコス」「アテナ・レムニア」、黄金と象牙(ぞうげ)の「アテナ・パルテノス」、オリンピアの「ゼウス座像」など多くのモニュメンタルな神像を制作して、「神々の像の作者」とよばれた。彼の作風は単純、明晰(めいせき)、しかも高邁(こうまい)な精神性を示し、古典前期の「崇高様式」を確立した。しかし、これらの作品はほとんど残らず、わずかに「アテナ・レムニア」の頭部ならびに「アテナ・パルテノス」の大理石の模刻が残るにすぎない。これに対し、彼の総指揮のもとに造営されたアテネのパルテノンの大彫刻群は、彼の様式を伝える貴重な原作である。当代の優れた彫刻家による共同制作であるとはいえ、彼の構想と直接の指導によって完成されたもので、古典時代の傑作の誉れが高い。なお、1950年、オリンピアのゼウス神殿の西側で彼の工房跡が発見され、同地から「ゼウス座像」の衣片の雌型(めがた)や、彼の銘のある杯が出土した。
[前田正明]