ノグルミ(英語表記)Platycarya strobilacea Sieb.et Zucc.

改訂新版 世界大百科事典 「ノグルミ」の意味・わかりやすい解説

ノグルミ
Platycarya strobilacea Sieb.et Zucc.

日当りのよいやや乾いた地に生えるクルミ科の落葉小高木。ノブノキ,ドクグルミの名もある。葉は奇数羽状複葉で互生する。小葉は先端が細くとがり,鋭い鋸歯がある。側小葉の基部は著しく不相称となる。花は6月ころ咲き,葉が展開した後に,新枝の先端に多数の尾状花序が集まる。下の方には雄花序があり,黄緑色で細長く斜上する。雌の花序は先端にあり,通常,基部は雌花であるが,上半部は雄花が占める。花は花被がなく,雄花では苞腋(ほうえき)におしべが並び,雌花では苞腋に翼状の小苞と合着しためしべがある。花後,雄花序は脱落し,雌花序の苞は伸長し硬くなり,その腋に1小翼果を包む。暖帯に分布し,東海地方以西,四国,九州,朝鮮,中国大陸,台湾に生育する。材は建築,器具,下駄などに使われる。球果はタンニン原料となり,染色,皮なめしに用いる。枝葉がついたものを川に流し,魚をとる。

 ノグルミ属Platycaryaはノグルミ1種のみからなる東アジア特産属であるが,化石から,かつては広い分布をしていたことが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノグルミ」の意味・わかりやすい解説

ノグルミ
のぐるみ / 野胡桃
[学] Platycarya strobilacea Sieb. et Zucc.

クルミ科(APG分類:クルミ科)の落葉高木。葉は奇数羽状複葉。小葉は7~15枚、縁(へり)に深く切れ込む鋸歯(きょし)があり、裏面葉脈褐色の毛が生える。花期は6~7月。花穂はオニグルミサワグルミと違って若枝の先に直立し、中央の花穂は雌花、周辺の花穂は雄花からなる。花は花被(かひ)はなく、1枚の包葉と2枚の小包葉があり、雄花は雄しべが6~10本、雌花は1個の子房がある。果実は小形の堅果で、倒三角形状、長さ約5ミリメートル、翼があり、10月に成熟する。同じく有翼の小堅果をつけるサワグルミに比べ、小形で翼の幅が狭い。日当りのよい山地に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国、台湾、ベトナムに分布する。幹や根の皮は革なめしに、果実は「花果児」といって染料にする。枝葉には有毒成分を含むという。

[伊藤浩司 2020年2月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノグルミ」の意味・わかりやすい解説

ノグルミ(野胡桃)
ノグルミ
Platycarya strobilacea

クルミ科の落葉高木。西日本の暖地の山地に生える。幹は直立し,高さ 10mに達する。葉は大きな羽状複葉で7~19の小葉から成り,互生する。6月頃,新しく伸びた枝の先に雌花の穂をつけ,これを囲んで淡黄色で尾状の雄花穂が何本もつき,下垂する。花には萼も花弁もなく,雄花は包葉内に6~10個のおしべがあり,また雌花は1個の子房から成る。果穂は直立し,濃褐色の楕円体状で長さ約 4cm,披針形で先が鋭くとがった,多数の硬い包葉が並ぶ。この包葉内に翼のある小さい堅果がある。落葉後もこの果穂だけ残るので晩秋によく目立つ。生長が速く,薪炭材に利用され,またシイタケの榾木 (ほだぎ) にも用いられる。球果を黄色の染料に用いる。

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