住宅金融専門会社(読み)じゅうたくきんゆうせんもんがいしゃ(その他表記)housing-loan company

日本大百科全書(ニッポニカ) 「住宅金融専門会社」の意味・わかりやすい解説

住宅金融専門会社
じゅうたくきんゆうせんもんがいしゃ
housing-loan company
Jusen company

個人向け住宅ローン専門の金融会社。ノンバンク一種で、略して住専(じゅうせん)とよばれる。バブル経済崩壊後に巨額の不良債権を抱え、その処理をめぐって1996年(平成8)の通常国会(住専国会)は紛糾。国民の税金(公的資金)を使った処理策に批判が集中し、結果として公的資金による不良債権の抜本処理が遅れ、「失われた十年」とよばれる日本経済の長期低迷を招く一因になった。住専処理でバブル期に8社あった住専は1社を除き、すべて清算された。

 1970年代初め、資金需給の逼迫(ひっぱく)で個人住宅向け資金を十分に供給できなかった大手銀行などが、大蔵省(当時)の指導を受けて相次いで住専を設立。三和銀行グループ(現、三菱UFJフィナンシャル・グループ)が母体となってつくった「日本住宅金融」が第1号で、社長に大蔵省出身の庭山慶一郎(にわやまけいいちろう)(1917―2012)がついた。その後、1970年代に都市銀行、信託銀行、地方銀行などが母体となって住専8社が発足した。各銀行は出資だけでなく人材も派遣し、経営に深く関与したため「母体行」とよばれた。

 1980年代になると銀行本体が住宅ローン業務に力を入れ、あおりを受けた住専は不動産融資へ傾斜。バブル期には、農林系金融機関から借りた資金で急速に不動産向け融資を膨らませた。この結果、バブル崩壊による地価急落で経営に行き詰まり、住専は不良債権問題の象徴となった。ただ処理をめぐり、「母体行責任」のある銀行などと、「貸し手責任」を問われた農林系との協議がつかず、処理策が固まったのは1995年末だった。

 1996年に施行した「特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法」(住専処理法)では、住専8社のうち7社を清算。ただちに発生した損失(一次損失、6兆4000億円)は、約6850億円の公的資金などを使って処理した。残る債権は新たに設けた公的債権回収会社の住宅金融債権管理機構(現、整理回収機構)へ移して回収を続けた。この回収に伴う二次損失(約1兆4017億円)は政府と民間金融機関で折半負担した。政府負担分については整理回収機構の回収益などをあてたため、新たな国民負担は生じなかった。このため住専処理の公的負担は、住専7社清算時の一次損失(約6兆5000億円)を穴埋めするために使われた6850億円にとどまった。民間負担分については、金融安定化拠出基金の運用益、金融安定化拠出基金から整理回収機構への出資相当額、預金保険機構一般勘定からの繰入れにより対応した。なお農林系が母体となった住専「協同住宅ローン」はバブル期に不動産融資を控えたため不良債権が少なく、現在も営業を続けている。

[矢野 武 2018年12月13日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「住宅金融専門会社」の意味・わかりやすい解説

住宅金融専門会社
じゅうたくきんゆうせんもんがいしゃ

1970年代に銀行などが設立した,個人向け住宅ローンを扱ったノンバンク。8社あり住専と略称された。当時,銀行,信託銀行などが企業向け融資を優先していたことと,個人向け住宅ローンは煩雑な事務負担がかかることから専門会社が設立された。しかし,その後,企業の借り入れが減退したことに加えて,コンピュータ化の飛躍的な進展で事務負担が大幅に軽減されたため,銀行,信託銀行などが競って個人向け住宅ローン市場に参入した。これらのローン金利は住宅金融専門会社の金利よりも低かったため,しだいに住宅金融専門会社の住宅ローン市場の占有率が下がった。そうした事態のなかで,1980年代後半に経済がバブル化し,住宅金融専門会社は主業の個人向けローンから不動産業向け貸し出しへと大きく傾斜した。バブル経済が崩壊すると,それら不動産業向け貸し出しが不良債権化し,住宅金融専門会社は巨額の不良債権を抱えた。1996年農林系金融機関を母体とする会社を除いた 7社が経営破綻し,6850億円の公的資金が投入され,7社は清算された。住専債権は住宅金融債権管理機構へ譲渡され,1999年に整理回収機構 RCCに移管された。(→金融安定化拠出基金

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