(1)ジュール・ベルヌの空想冒険小説『海底二万里』に登場し、海底冒険旅行をした潜水艦名。その後の科学者に夢を抱かせたことで知られる。
(2)オーストラリアのヒューバート・ウィルキンスSir Hubert Wilkins(1888―1958)が極洋の結氷海中を潜航する計画をたて、1931年に、通常機関、1732トンの潜水艦につけた艦名。ただし、この試みは数回の故障によって不成功に終わった。
(3)アメリカ海軍がゼネラル・ダイナミックス社に建造させた世界最初の原子力潜水艦。1952年6月14日建造開始、1954年9月30日就航。平常時排水量3764トン、潜水時排水量4040トン、長さ99メートル、幅8.5メートル。加圧水型原子炉により蒸気を得てタービンを動かし、1万5000馬力の出力で、潜水中の速力は20ノット以上である。乗員は士官10人のほか95人。同艦は1958年8月に、同名の前艦が失敗した北極海で、海面が結氷した海中を太平洋から大西洋に向かって潜航横断に成功し、途中8月3日に北極点を通過した。その成功の要素の一つに慣性航法装置の使用があげられる。試運転開始から最初の燃料補給までの26か月の航走距離は6万海里で、そのうち3万4500海里は潜航であった。
[茂在寅男]
潜水艦の発展史上で記念すべき艦につけられてきた艦名で,次のものがある。(1)1800年R.フルトンの設計建造になる水上帆走,水中は手動スクリュー推進の潜水艇。(2)85年イギリスのA.キャンベル,J.アッシュの設計建造になる電池電動機推進の潜水艇。(3)1954年9月30日就役,55年1月17日〈われ原子力にて航行中〉の歴史的メッセージとともに世界で初めて原子力推進を採用したアメリカ海軍原子力潜水艦で,原子力の採用により,潜水したまま長時間の航行が可能な真の潜水艦となった。ノーチラスの名はJ.ベルヌの小説《海底2万リーグ》(1870)に登場する潜水艦の名としても有名。なおノーチラスとはオウムガイのこと。
執筆者:坂元 直家
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…戦艦が徐々に姿を消した代りに空母が主役となり,とくにアメリカでは原爆搭載機を積む空母が戦略兵器としての価値を期待されるようになった。1954年,米潜水艦ノーチラス号の原子力機関成功によって,潜水艦は従来の欠点とされた水中速力と潜航時間を飛躍的に増大し,長射程ミサイルを搭載することによって戦略的な役割をも担うことになった。他方,水上艦艇はジェット機,戦術核兵器などによる脅威の増大に対してレーダーと対空ミサイルを主体とした艦隊防空体制の整備に腐心してきた。…
…プルトニウム生産能力も大拡張され,サウス・カロライナ州サバンナ・リバーには重水減速型プルトニウム生産炉が建設された。原子力潜水艦は48年ころから開発され,54年世界初の原子力潜水艦ノーチラス号が進水した。原子力潜水艦の原子炉には,今日の加圧水型軽水炉の原型である濃縮ウラン燃料・軽水減速冷却型が用いられた。…
…これに対して,軍事利用の面では,燃料の長期にわたる補給を必要とせず,また長期潜水に耐える点が他に代えがたいため,原子力空母や原子力潜水艦として導入され,実戦配備されている。
[原子力船の歴史]
アメリカにおいては1954年に原子力潜水艦ノーチラス号が進水した。この技術を基礎として,56年には原子力平和利用の一つとして貨客船のサバンナ号の建造が決まり,62年に完成した。…
…
[歴史]
アメリカでは,1942年にフェルミがシカゴパイルCP‐1炉による世界最初の核分裂連鎖反応に成功した直後から各種の原子炉の概念が検討され,44年までに少なくとも5種の炉型,たとえばヘリウム冷却高温ガス炉(HTGR),液体金属冷却高速増殖炉(LMFBR),均質炉,液体金属冷却炉などが提唱された。その後,46年から原子力潜水艦の開発が始まり,54年のノーチラス号(PWRを搭載)就航までにPWRの基本的技術が開発されたのであった。また,この間,1951年には高速炉EBR‐1が世界最初の100kWeの原子力発電に成功し,一方,均質炉ではウォーターボイラー炉が開発されている。…
…そこで,たとえばアメリカは,北極越えに飛来するソ連のICBMや核爆弾を搭載した戦略爆撃機を一刻も早く捕捉するため,1956年にカナダと共同で,北緯70゜線に沿って,DEWライン(遠距離早期警報組織)を設置した。またアメリカは58年8月8日,世界初の原子力潜水艦ノーチラス号による北極潜航横断の成功を発表した。ソ連も60年代に入ってから,原潜がムルマンスク方面から北極点へ行き,そこで氷を破って浮上,SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射できる態勢を誇示した。…
※「ノーチラス号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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