軽水炉の一種。アメリカで開発された。英文のつづりPressurized-Water Reactorの頭文字をとってPWR、あるいは単にPともいう。
PWRでは、一次冷却系の圧力は約150気圧に保たれている。この圧力の下では、約343℃まで水を沸騰させずに加熱することができるが、熱伝達率を高く保つため、平均315℃まで熱せられる。炉心で加熱された高圧水は、原子炉一次冷却系を循環し、蒸気発生器の二次側へ熱を伝える。二次冷却系の水は圧力が約70気圧で沸騰し、温度が約260℃のタービン用水蒸気になる。燃料棒は、ジルカロイ被覆管に二酸化ウランのペレットを封入したもので、被覆管の直径は約1センチメートル、長さ約4メートル、厚さ約0.6ミリメートルである。電気出力118万キロワットの関西電力大飯発電所(おおいはつでんしょ)4号機を例にあげると、このような燃料棒が、約13ミリメートルのピッチ(間隔)で264本束ねられて一つの燃料集合体をつくり、炉心は、燃料集合体193体で構成されている。
原子炉の運転中には、燃料棒の中心部の温度は約2000℃、被覆管の表面温度は平均315℃にもなり、わずか5ミリメートルの間で1500℃以上もの温度差が生じている。燃料棒の間を流れる冷却水は、秒速3メートルのジェット流で、定常的に発生熱を運び去っている。軽水炉の特徴は、経済性を追求したために、非常にコンパクトにできており、出力密度が非常に高い点にある。大型PWRの出力密度は約100キロワット/リットル、線出力は500ワット/センチメートル程度である。
[桜井 淳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…冷却材を兼ねた減速材に加圧した軽水を用い,低濃縮ウランもしくは若干のプルトニウムを混合したウランの酸化物を燃料として用いる原子炉をいう。冷却材に沸騰を許し,生成する水蒸気を直接利用する(直接サイクル)沸騰水型原子炉boiling water reactor(略称BWR)と,冷却材に沸騰を許さず炉心で高温になった水を蒸気発生器に導き,そこで別の水に熱を伝えて蒸気を発生させる(間接サイクル)加圧水型原子炉pressurized water reactor(略称PWR)とがある。人類が使いなれた水を主材料に使っていること,アメリカという大きな市場をもつ国で,ゼネラル・エレクトリック社とウェスティングハウス社という巨大電機メーカーが,加圧水型原子炉と沸騰水型原子炉という二つのやや異なる型式で競争しつつ実用化を目指したことにより急速に普及し,これが各国へも波及した。…
…原子は原子核とそのまわりをまわる電子とから構成されている。たとえば,原子と原子が結合して分子をつくる通常の化学反応では,電子が反応の主役となり原子核は反応に関与しない。しかし,ある特殊な状態の下では,原子核が反応を起こすことがある。それを原子核反応あるいは単に核反応という。核反応に伴って発生するエネルギーを原子核エネルギー(核エネルギー)nuclear energyあるいは原子エネルギーatomic energyという。…
…原子炉の熱を利用して水を蒸発させ,その蒸気で蒸気タービン‐発電機を回すことによって発電を行うこと。火力発電におけるボイラーを原子力蒸気供給系nuclear steam supply system(略称NSSS)で置き換えたものと考えればよい。原子炉で熱が発生する原理はボイラーの場合と異なり,核分裂に基づくものであって,このとき熱と同時に放射線の放出があり,しかも放射性の核分裂生成物が発生する。核分裂生成物は核壊変し,これに伴う崩壊熱が長期間にわたって発生するので,原子炉停止後も崩壊熱を適切に除去してやる必要がある。…
…アメリカでフォート・セント・ブレイン発電所,西ドイツでAVRやTHTRが建設・運転されたが廃止され,現在は日本(HTTR),中国にしかない。加圧水型原子炉冷却材を兼ねた減速材に加圧水を用いた原子炉。英語のpressurized water reactorを略してPWRということもある。…
※「加圧水型原子炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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