ベトナム北部,トンキン・デルタ北東部の港市。人口59万1100(2004)。ハノイの外港としてベトナム北部最大の港であり,タイビン川の分流と,キュアカムおよびタムバック川の合流点に位置し,河口から25km上流にある。トンキン・デルタは一般に低平で,古代にはハノイの外港は現在のハイフォンより北方にあったらしい。しかしタイビン川の形成するデルタは,ソンコイ川本流のそれよりも土砂の堆積が少なく,かつ一部に地盤の沈下も認められることから,19世紀後半にハノイの外港の位置として選ばれたと思われる。ドソン半島の北東に接するキュアカム川,あるいはキュアナム川により外海から港に入り得るが,前者は現在比較的泥の沈積が多いので小型船舶用である。港内は干潮時でも7mの水深があり,4000トン級の船が入り得るが,満潮時には1万トン級の船も接岸できる。港口は絶えず浚渫されており,底質は粘土で投錨に便利である。市街は1874年ごろから本格的に建設され,フランス植民地時代にトンキン,ラオスの門戸として重要な都市となった。セメント工場が早くからつくられ,独立後は新たにソ連,中国,東ドイツなどの援助で紡績,アルミ加工,ガラス,造船などの工場が建設された。トウモロコシ,茶,ウルシ,セメント,石炭などを輸出,小麦,石油,機械類などを輸入する国際港である。ハノイとは鉄道(103km)のほか,国道などで結ばれている。北に景勝地アロン湾を控える。
執筆者:別技 篤彦
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ベトナム北部の港湾都市。人口は58万1600(2003推計)で、ホー・チ・ミン、ハノイに次ぎ同国第3位。首都ハノイの東南東90キロメートル、タイビン川の分流とキュアカム川、タムバック川の合流点に位置し、河口より25キロメートル上流のトンキン・デルタ北東部に展開する。1世紀ほど前には小さな村にすぎなかったが、フランス領時代から急速に発展し、トンキン、ラオスの門戸として重要な都市となった。市域はホンバン、ゴーケン、レカン、キエンアンの4区と郊外の8区、それに一つの町域からなる。工業はデンハイ、ハロン地区のセメントや機械、バクダン地区の造船、ガラス、魚の缶詰などがおもなものである。港内は干潮時でも7メートルの水深があり、4000トン級の船が接岸できるが、満潮時には1万トン級の船も接岸可能である。鉄道はハノイやラオカイに通じる滇越(てんえつ)線の終点で、自動車道はハノイ、ホンゲイなどと結ぶ。ベトナム戦争ではアメリカ空軍の猛爆を受けた。
[菊池一雅]
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