改訂新版 世界大百科事典 「ハシビロコウ」の意味・わかりやすい解説
ハシビロコウ (嘴広鸛)
shoebill
whale-headed stork
Balaeniceps rex
コウノトリ目ハシビロコウ科の鳥。この科はハシビロコウ1種だけからなる。全長約1.2m。形態,大きさともコウノトリ類に似ているが,大きな頭と木靴のような形の異常にぶ厚いくちばしが特徴。英名は,いずれもこの奇妙なくちばしと頭に由来する。羽色は全身スレート灰色で,背は光沢のある緑色を帯びている。雌雄は同色,幼鳥は褐色に富む。アフリカ中央部の奥地に分布し,主として白ナイルの上流や熱帯東アフリカの人跡まれな沼沢に生息している。ふつう単独かつがいですみ,習性はかなり夜行性である。昼間はヨシやパピルスの間で休み,夕方出て魚,カエル,小型のヘビ,その他の水辺の小動物をあさる。ハシビロコウのくちばしは,とくにハイギョやナマズを捕食するのに適応しているといわれている。飛ぶときは,サギやペリカンのように,首をZ字形に縮めて飛ぶ。鳴管の筋肉が退化しているため,鳴声はほとんど出さず,かわりに上下のくちばしをたたき合わせてカタカタと鳴らす習性がある。巣は湿地の中の草の間に水生植物を積み上げてつくり,大きなものは外側の直径2.5m,産座の直径1mに及ぶ。1腹の卵はふつう1~2個(まれに3個)。ただし,雛として育てられるのは,ほとんどの場合1羽だけである。抱卵期間は約30日。雛は少なくとも3ヵ月間巣にいて,両親が主としてオタマジャクシを与えて育てる。この鳥の類縁関係についてはいろいろな意見があるが,原始的なコウノトリという説が有力である。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報