日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハスドルバル」の意味・わかりやすい解説
ハスドルバル
はすどるばる
Hasdrubal
(?―前221)
カルタゴの部将。ハミルカル・バルカスの女婿。ハンニバルの姉の夫にあたる。紀元前237年ハミルカルとともにスペインへ遠征。のち北アフリカでヌミディア人の蜂起(ほうき)を鎮圧し、ここにカルタゴの支配を及ぼそうと企図した。前229年ハミルカルの死後スペインでの命令権を継ぎ、イベリア人の貴族と姻戚(いんせき)関係に入るなど外交術を駆使して支配を強め、都市カルタゴ・ノバを建設してバルカス家の威勢をこの地に確立した。彼はここにヘレニズム的な新王国の建設を計画して王城を造営し、ギリシア風の貨幣も鋳造した。だが彼のスペイン経営はローマとの緊張を生み、交渉の結果スペイン北東部のエブロ川以南をハスドルバルの勢力圏とする合意が成立した。
[田村 孝]