改訂新版 世界大百科事典 「ハタザオ」の意味・わかりやすい解説
ハタザオ (旗竿)
Arabis glabra (L.) Benth.
山ろくや海岸近くの道端に生えるアブラナ科の越年草。和名は直立した草状にもとづく。冬のあいだはロゼット状の根出 葉だけがある。茎は直立してほとんど分枝せず,高さ70~100cmになり,葉は披針形で,基部が矢じり状となり,全体が緑白色で,根出葉をのぞいて毛がない。5~9月ころ,白色で小型の十字花を開き,果実は長さ5~6.5cmの細長い棒状で,茎に並行して立ち上がる。北半球に広く分布する。
ハタザオ属Arabis(英名rock-cress)は北半球に数十種がある。日本にも10種ほどがみられる。ハマハタザオA.stelleri DC.は海岸の砂地に生える越年草。全体に星状に分岐した毛があってざらつく。花は5~6月ころに開き,ハタザオよりやや大きい。日本,朝鮮,アムール地方に分布する。ヤマハタザオA.hirsuta (L.) Scop.ssp.nipponica (Franch.) Kitamuraは山野の道端に生え,ハタザオに比し全体に毛があるので区別できる。日本,朝鮮,中国北部に分布する。特に岩場に生えて小さくなったものが,フジハタザオと呼ばれることもある。スズシロソウA.flagellosa Miq.は山の斜面に生える多年草で,石灰岩地に多い。長い伏枝を伸ばして地表をはい,4~5月ころ,株の中央から10~15cmの花茎を出して,白い十字花をつける。近畿地方以西の本州と四国,九州に分布する。また,ハタザオ属のなかで,高山や岩場に分布する小型で花の大きな種のいくつか(ニワハタザオA.albida Stev.(英名wall-cress),ニイタカハタザオA.alpina L.など)は,ロックガーデンで栽植される。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報