ハッチ(読み)はっち(英語表記)hatch

翻訳|hatch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハッチ」の意味・わかりやすい解説

ハッチ(船)
はっち
hatch

船の貨物倉またはその他の区画へ貨物を搬入・搬出したり、人が出入りするために設ける開口総称。開口の周囲には板材を甲板に垂直に立て回して補強するが、これをハッチコーミングという。甲板上では、打ち込む海水風雨の浸入を防ぐために、蓋(ふた)の役目をするハッチカバーが必要である。古くから使われていたハッチカバーは、ハッチコーミングの上にハッチビームを船体の横方向に約1メートル程度の間隔で並べ、その上に細長い木板製のハッチボードを船体の長さ方向に敷き詰め、その上から防水加工をした帆布を2、3枚かぶせて端を帯金で押さえるか、ロープで縛り付けていた。しかし、この方法では荷役に多くの人手と時間がかかるし、悪天候時には海水が浸入して沈没する危険もあった。1950年代の中ごろに現れた鋼製ハッチカバーは、機械化による労力の軽減と確実な閉鎖性で従来の欠点を克服し、急速に普及した。

[森田知治]


ハッチ(住宅建築)
はっち
hatch

一般には船の甲板の昇降口をさすが、住宅建築では、間仕切両側から物品出し入れができるよう設けられた間口をいう。台所食堂との間仕切に設けられた食器や料理の受け渡し口や、病院の薬受け渡し口などがある。

 住宅におけるハッチは、台所と食堂の最短距離を通すことにより配膳(はいぜん)や後かたづけの合理化を目的としているが、両室を結び付け相互の空間に広がりを与えたり、台所の孤立感を和らげたりもする。上部のみを戸棚にしたり、戸棚の一部をくりぬいたり、あるいは壁面を切ったりする場合がある。また戸を閉められるようにすれば、台所と食堂をまったく独立した空間に変化させることもできる。

 このほか、ハッチは、建物内の床や屋根などに設けられた人の出入りする開口部や、潜るように出入りする小さな出入口をさすこともある。

[中村 仁]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハッチ」の意味・わかりやすい解説

ハッチ
hatch; hatchway

(1) 船舶の倉口,昇降口。貨物の出し入れや,人が出入りするために,甲板に開いている穴。船倉内に貨物を出し入れする穴をカーゴハッチと呼び,海水が船内に流れ込むのを防ぐために,ハッチの周囲に,十分な高さのハッチコーミングを設け,その上部をハッチカバーでおおう。 (2) 建築用語としては,(a) 建物内の床や屋根に設けた開口,(b) 上下2枚の戸が開閉する開口部の下の戸,(c) 間仕切り棚の両側から使用する開口。台所と食堂の間で,食器の受渡しをしたり,病院の薬局で,薬の受渡しをする場所などに設けることが多い。

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