バイオテクノロジーによる土壌改良(読み)ばいおてくのろじーによるどじょうかいりょう

知恵蔵 の解説

バイオテクノロジーによる土壌改良

2003年2月の土壌汚染対策法の施行契機に、有害物質によって汚染された土壌地下水の浄化事業が市場規模を拡大しつつある。この有力ツールとして、着目されているのが、環境に優しいバイオテクノロジーを活用した土壌改良である。 工場の跡地にマンションを建設する場合など、土壌汚染は住民の健康を害しかねない大きなリスク要因として認識されている。このため、敷地の土壌そのものを入れ替える土木工事が行われるケースもあるが、開発者にとっては採算悪化要因となり、物件の販売価格にも影響を及ぼす。 一方、生物の機能を利用して汚染を浄化し、元の状態まで回復する技術として登場したのが「バイオレメディエーション」である。この技術は、従来物理・化学的な土壌改良(土壌の固化洗浄焼却廃棄、地下水の吸着・酸化処理など)に比べ、安価で省エネルギータイプの土壌改良技術といえ、安全性も高く、土壌・地下水の損壊を最小限に食い止められるメリットがる。 基本的には、微生物を利用して土壌改良・地下水浄化を行うが、汚染現場の土壌に含まれる微生物を利用して、その活性化を促すことで土壌汚染等を浄化するものと、研究室などで培養した外来微生物を汚染された土壌や地下水に導入するタイプがある。 従来、これら微生物を利用した土壌改良には、化学的に複雑なプロセスを要し制御が容易でなかったことや、適用分野が限られ、しばしば効果が上がらなかったケースもあったことから実用化が疑問視されてきた。しかし、近年、技術レベルも向上し、事業化に期待が持たれている。ただし、毒性の強い土壌汚染には対処視しえない等の課題も残されている。

(森岡英樹 金融ジャーナリスト パラゲイト・コンサルタンツシニア・リサーチ・アソシエイツ / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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