バイオレメディエーション

デジタル大辞泉 の解説

バイオレメディエーション(bioremediation)

微生物菌類など生物を利用して有害物質を分解・除去する浄化手法の総称。汚染土壌の修復廃水処理石油精製における有害成分の分解などに利用される。バイオオーグメンテーションバイオスティミュレーションファイトレメディエーションなどの手法が知られる。

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百科事典マイペディア の解説

バイオ・レメディエーション

有害汚染物質を微生物により分解し,環境の修復を図る技術のことで,〈生物的環境浄化〉と訳される。自然の生態系が本来持っている自浄作用を強化する方法であるため,二次汚染の可能性が少ない,汚染現場での処理が可能,コストの抑制が可能などの特徴がある。アメリカでは環境保護局(EPA)を中心に研究が進められ,ガソリン,ディーゼル油などの石油製品や,トリクロロエチレンなどの塩素系化合物に汚染された土壌の浄化などに利用されている。最近日本でも,環境庁,通産省が中心となり,重金属や塩素系化合物などによる汚染土壌の修復を主なターゲットに,安全指針策定や研究開発などが進められている。→ハイテク公害公害バイオテクノロジー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

バイオレメディエーション
bioremediation

有害物質で汚染された土壌や河川に,生物を投入することにより浄化する技術。土壌や河川の有機物(→有機化合物)は,本来そこに生息する細菌類菌類などによって無機物(→無機化合物)に分解され,浄化される(→自浄作用)。しかし,そうした菌類の生育が,有機物の増加,酸素不足,有毒物の散布などの環境悪化により妨げられると,自然浄化が十分に行なわれなくなる。そこで,そのような環境下でも生育できる微生物を投入し,環境の浄化をはかる。あわせて,低温の深海や高温の温泉などでも生存可能な微生物を活用する研究や,難分解性化学物質を浄化する微生物の探索なども進められている。適切な安全性評価をふまえながら,汚染された土壌や地下水(→土壌汚染地下水汚染)などの浄化を進めることで,生態系への影響や人への健康影響を低減することが期待される。

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知恵蔵 の解説

バイオレメディエーション

微生物を用いて環境汚染を修復する技術。有害物質によって広範囲に微量汚染された環境や、事故などによって局所的に高濃度汚染された環境などを修復する。重金属やダイオキシンなどによる土壌汚染、有機塩素化合物による地下水汚染、タンカーからの流出原油による海洋汚染などに対して、汚染物質を無害化する微生物が用いられる。微生物は、多様で厳しい自然環境のもとで浄化機能を発揮できなければならず、このような微生物を自然環境中から見いだすか、従来の微生物が持っている機能を、組み換えDNA技術などを用いて強化する。植物を用いて環境汚染を修復する技術は、ファイトレメディエーションと呼ばれる。土壌中の有害物質を植物が根から吸収する能力を利用する。

(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

化学辞典 第2版 の解説

バイオレメディエーション
バイオレメディエーション
bioremediation

微生物を含めた生物が有する化学物質などの分解能力を活用し,環境中の有害物質を分解・無害化する環境浄化・修復方法.炭化水素系化合物を主とする石油成分中の有害化学物質の分解や廃水処理などに応用されている.一般に,低濃度,広範囲の汚染に効果的とされており,トリクロロエチレンなどによる土壌汚染や原油による海洋汚染などへの対策,さらにダイオキシンPCB有機塩素系化合物などの難分解性物質の処理技術として期待されている.一方で,高濃度汚染や利用環境に限界があるなどの問題もある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 の解説

バイオレメディエーション

微生物、植物、動物などが持っている化学物質の分解能力や蓄積能力を利用して、自然環境を修復すること。「石油タンカーの事故」や「フッ素、トリクロロエチレンなどの化学物質による地下汚染」などで用いられる方法である。この技術は、2つの方法に分類される。1つは、地中に存在する微生物に窒素やリンなどの栄養を散布することで、微生物の分解能力を上げる方法である。もう1つは、分解能力を持つ微生物そのものを散布する方法である。バイオレメディエーションは新しい環境再生の方法として注目される一方で、微生物による生態系への影響が危惧され、事前にきちんとアセスメントを実施する必要がある。

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