地熱発電方式の一つ。一般に地熱発電は地下から取り出した高温・高圧の蒸気をそのまま用いてタービンを回し発電するのに対し、バイナリー発電では水よりも沸点の低い媒体(ペンタン、イソブタン、代替フロン、アンモニア水など)を加熱・蒸発させ、その蒸気でタービンを回す発電方式である。加熱源系統と媒体系統、二つの熱サイクルを利用することからバイナリー発電、あるいはバイナリーサイクル発電よばれる。発電設備が比較的小型で、小規模の発電事業に向いている。また、50~60℃程度の温水も加熱源として利用できるため、温泉資源が多い日本の国産エネルギーとして今後の拡大が見込まれている。温泉の湯を利用した発電については、温泉バイナリー発電、温泉発電ともよばれる。
アメリカの地熱エネルギー協会(GEA:Geothermal Energy Association)によると、2012年時点で世界の地熱発電設備容量の約3割を占めているアメリカでは、地熱発電におけるバイナリー発電の設備容量が約2割あるのに対し、日本はインドネシア、アメリカに次ぎ世界第3位の地熱資源量を有しているものの、地熱発電設備容量ではアメリカの2割以下、世界第8位(2010)にとどまり、バイナリー発電設備の利用もきわめて低水準にある。日本最大の地熱発電所である九州電力八丁原(はっちょうばる)発電所(大分県)が2006年(平成18)からようやくバイナリー発電所の営業運転を始め、鹿児島県の霧島国際ホテルには自家発電装置があるものの、これまでバイナリー発電は積極的には開発されなかった。
産業技術総合研究所が行った地熱資源量調査では、国内で有望とみられる加熱源をバイナリー発電にあてた場合、発電量は中型の原子炉8基分にあたる833万キロワットに上ると試算されている。今後は温泉を利用した小規模の発電設備を導入するケースが増えると予測され、経済産業省は電気事業法の施行規則を改正し、2011年3月、出力が300キロワット未満のバイナリー発電施設に限り、ボイラー・タービンの主任技術者選任などを不要とした。さらに、環境省は、温泉地が多い自然公園内における地熱発電の規制緩和を2012年3月に行い、国立・国定公園内の普通地域と、第2種・第3種特別地域での開発を可能にした。これにより、国立公園で初めてとなる福島県福島市の土湯温泉や、大分県由布(ゆふ)市の由布院(ゆふいん)温泉などで、温泉利用のバイナリー発電の開発が進んでいる。また、国内メーカーは大規模プラント向けの大型設備を中心に生産してきたが、規制緩和を背景にして国内の小型バイナリー発電設備にも目を向け始めた。
[編集部]
(2013-4-10)
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