バザン(読み)ばざん(その他表記)André Bazin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バザン」の意味・わかりやすい解説

バザン(André Bazin)
ばざん
André Bazin
(1918―1958)

フランスの映画批評家、理論家。アンジェに生まれる。サン・クルー高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)を卒業したのち、占領下のパリでシネクラブ活動を組織。第二次世界大戦後、新聞、雑誌の映画批評を通じて、多義的な現実を全体的にとらえるリアリズムの主張を展開。従来のモンタージュ理論を排して、ネオレアリズモやパン・フォーカス(奥行の深い撮影)による演出を支持した。1951年には『カイエ・デュ・シネマ』誌を創刊、のちのヌーベル・バーグに多大な影響を与えた。主著に『映画とは何か』(1958~1962)がある。

[武田 潔]

『小海永二訳『映画とは何か』全4巻(1967~1977・美術出版社)』


バザン(Hervé Bazin)
ばざん
Hervé Bazin
(1911―1996)

フランスの小説家。本名ジャン・ピエール・エルベ・バザンJean-Pierre Hervé-Bazin。アンジェに生まれる。『蝮(まむし)を手に』Vipère au poing(1948)で小説家として世に出た。自己の体験に根ざして、地方ブルジョア社会とその家族生活の問題を、初期は激しく非難し、のちには平静なモラリストの眼(め)をもって描いた。『壁に頭をうちつけて』La Tête contre les murs(1949)、『小馬の死』(1950)、『立ちて歩め』Lève-toi et marche(1952)、『愛せないのに』Qui j'ose aimer(1956)、『息子の名において』Au nom du fils(1961)、『梟(ふくろう)の声』Cri de la chouette(1972)、『真夜中の悪魔』Le Démon de minuit(1988)、『父親学校』L'école des pères(1991)など、心理的な人物表現と、アイロニーをこめた社会風俗の描写に優れた数々の小説がある。

[小林 茂]

『二宮敬・山本顕一訳『愛せないのに』(1964・白水社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バザン」の意味・わかりやすい解説

バザン
Hervé Bazin
生没年:1911-96

フランスの作家。本名Jean-Pierre Hervé-Bazin。ルネ・バザンは大伯父詩集《日》(1947)でアポリネール賞を受け,翌年,権威主義的な母親に対する息子の憎しみと徹底的な反抗を描いた自伝的小説《蝮(まむし)を手に》でセンセーションを巻き起こす。同系列の《壁にぶつけた頭》(1949),《小馬の死》(1950)のあと作風が変わり,《立ちて歩め》(1952),《愛せないのに》(1956),《息子の名において》(1960)などには,過酷な現実をしんぼう強く受容して生きる人物のけなげさや,できの悪い息子に深い愛情を注ぐ父親の諦念が描かれている。ただし辛辣(しんらつ)なイメージを多用するダイナミックな文体に変りはない。1973年以降アカデミー・ゴンクール会長をつとめた。
執筆者:


バザン
René Bazin
生没年:1853-1932

フランスの作家。アンジェのカトリック大学で法学を教えていたが,小説《ステファネット》(1884)で文壇に登場。20世紀初頭のカトリック復興の一翼を担い,同時代の無限の進歩の神話に逆らって,《滅びゆく土地》(1899),《芽吹く春》(1907)など,農村を舞台とする小説のなかで,家庭と大地への根付きを基盤とするキリスト教的伝統の尊崇を説く一方,貴重で確実な伝統の諸価値をなおざりにしているフランスの将来に対する不安を表明する。文体は詩情にあふれ,描写も正確だが,護教論的色彩が強く,カトリック的主題の深い追求はみられない。宗教的著作に《ド・フーコー神父伝》(1920)がある。アカデミー・フランセーズ会員。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バザン」の意味・わかりやすい解説

バザン
Bazin, Hervé

[生]1911.4.17. アンジェ
[没]1996.2.17. アンジェ
フランスの作家。本名 Jean-Pierre Hervé-Bazin。大叔父に R.バザンをもつ。祖母の手で育てられ,反抗的な少年期をおくる。アンジェのカトリック系大学に学ぶが中退,パリに出てジャーナリズムに関係。 1948年自伝的な処女小説『蝮 (まむし) をつかんで』 Vipère au poingで認められ,以後激越な文体で,家,教会,母性に仮借のない攻撃を加え,独自の境地を開いた。主著『壁にぶつけた頭』 La Tête contre les murs (1949) ,『仔馬の死』 La Mort du petit cheval (50) ,『立ちて歩め』 Lève-toi et marche (52) ,『愛せないのに』 Qui j'ose aimer (56) ,『息子の名において』 Au nom du fils (60) ,『母権家族』 Le Matrimoine (67) ,『緑色の教会』L'Eglise verte (81) 。

バザン
Bazin, René (François Nicolas Marie)

[生]1853.12.26. アンジェ
[没]1932.7.20. パリ
フランスの小説家。パリ大学に学び,1875年以後故郷のカトリック大学で法律学を講じていたが,文学への志をいだき,『ステファネット』 Stéphanette (1884) をはじめ多くの作品を発表。大地に根ざす農民の生活や自然に対する感情をいきいきと表現することにすぐれていた。代表作『死に行く大地』 La Terre qui meurt (99) ,『オベルレ一家』 Les Oberlé (1901) ,『麦の芽生え』 Le Blé qui lève (07) 。 H.バザンの大叔父。

バザン
Basin, Thomas

[生]1412. コードベック
[没]1491.12.3. ユトレヒト
フランスの年代記作者。リジュー司教 (在任 1447~66) 。シャルル7世の国政顧問。次の王ルイ 11世と合わず司教座を追われた。 1471~87年頃書かれた著作『シャルル7世時代史』 Historia Caroli et sui temporisおよび『ルイ 11世時代史』 Historia Ludovici et sui temporisは同時代の最も重要な記録である。

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