バルドゥング(読み)ばるどぅんぐ(英語表記)Hans Baldung

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルドゥング」の意味・わかりやすい解説

バルドゥング
ばるどぅんぐ
Hans Baldung
(1480ころ―1545)

ドイツの画家通称をグリーンGrienといい、ストラスブール近郊に生まれる。初期の伝記的事実は明らかでないが、1507~09年の間デューラーの工房で働いたことがあると推定され、初期の作風にはデューラーの影響が濃い。1505~08年ハレの市教会のために「聖セバスチャンの殉教」および「三王の礼拝」を描いた二つの扉式祭壇画を制作している。09~12年フライブルクに滞在し、同地の聖堂に多くのステンド・グラスの下絵を描いたほか、聖堂の巨大な主祭壇画を描いた。以後はストラスブールで制作し、同地で死去した。彼の人物画には光の導入によってフォルムにマニエリスム的なひずみが生じている。『虚栄』(ウィーン美術史博物館)や『死と女』(バーゼル美術館)のような寓意(ぐうい)画のほか、銅版および木版の作もある。

[野村太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バルドゥング」の意味・わかりやすい解説

バルドゥング
Baldung-Grien, Hans

[生]1484頃.シュワーベン,グミュント
[没]1545. シュトラスブルク
ドイツの画家。通称 Grien。 1503年から 09年頃まで A.デューラーの助手としてニュルンベルクに滞在。その後,12年にブライスガウのフライブルクにいたが,17年にはシュトラスブルクに戻った。初期の作品においてはデューラーの影響が明白であり,後期には,グリューネワルト様式との関連が認められる。ドイツ・ルネサンスを代表する画家の一人。宗教画,肖像画のほかに,神話,寓意的題材も扱った。作品は,フライブルク大聖堂の祭壇画 (1512~16) のほか,『エジプトへの避難途上の休息』 (ニュルンベルク美術館) ,『哀悼』 (15,ベルリン国立美術館) など。

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