日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドナウ派」の意味・わかりやすい解説
ドナウ派
どなうは
Donauschule
16世紀前半におけるドイツ絵画の一流派。南ドイツのドナウ川流域地方を中心とする。ドナウ派のロマンチシズムといわれるこの派の共通した表現は、森林の多いこの地方の神秘的、浪漫(ろうまん)的な風景の中に、自然と人間との交感をドラマチックに描くのが特色である。代表的な画家としてはアルトドルファーおよびフーバーWolf Huber(1485―1553)があげられる。パッサウの画家フーバーには、代表作としてオーストリアのフェルトキルヒ教区教会の祭壇画『キリスト哀悼』や、『エジプトへの逃亡』(ベルリン絵画館)がある。初期のクラナハ(大)および初期のブロイ(大)Jörg Breu(1475ころ―1537)にもこの派の影響が認められる。アウクスブルクの画家ブロイの代表作はツウェットル聖堂の「ベルンハルトの祭壇」である。版画ではニュルンベルクに生まれウィーンで死去したヒルシュフォーゲルAugustin Hirschvogel(1503―53)がいる。
[野村太郎]