改訂新版 世界大百科事典 「ばんどり騒動」の意味・わかりやすい解説
ばんどり騒動 (ばんどりそうどう)
1869年(明治2)越中国新川郡で,加賀藩の厳しい封建支配に反抗して起こった農民一揆。同年は大凶作であったが,加賀藩は貢租の徴収を強行した。新川郡の農民たちは10月,塚越村忠次郎を発頭人とし,貢租徴収の公正,農村役人(徴税機関)である十村(とむら)・同手代・惣代肝煎の公選,貢租減免,物価引下げなどを要求して蜂起した。ときに晩秋で,数万の農民たちはばんどり(蓑)をまとって集結したので,この呼称がある。一揆は郡内の十村・同手代・惣代肝煎など50余戸を打ちこわし,焼き払い,一時,越中国東半分の支配機構を壊滅させた。しかし藩兵と交戦中に忠次郎は負傷して逮捕され,一揆もやがて鎮圧された。忠次郎は翌年10月斬罪に処せられ,副首領格の浅井村伊七郎は准流10年を言い渡された(のち償金10両で出獄)。しかし他の逮捕者は忠次郎処刑後の11月に出獄した。忠次郎が一揆の全責任を負ったためといわれている。この一揆は,“御一新”にもかかわらず加賀藩の厳しい封建支配が続くことに反発し,十村などの公選制,貢租の減免などを獲得し,もって封建体制の打破を図ったものといえる。
執筆者:有元 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報