パスカルの原理(読み)ぱすかるのげんり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パスカルの原理」の意味・わかりやすい解説

パスカルの原理
ぱすかるのげんり

密閉した容器の中で静止している流体の各部分の圧力は、考える面の選び方によらず一定であるという原理。1653年フランスのB・パスカルが提唱した。したがって、一部分の圧力を増すと、どの方向にも圧力は上昇するので、他の部分の圧力も同じだけ増すことになる。流体内のある一つの任意の面を考える。面の両側の流体は互いに力を及ぼし合っているが、面に平行な方向の単位面積当りの力を接線応力(または、ずり応力)といい、垂直な方向の単位面積当りの力を法線応力という。静止状態にある流体では、接線応力は現れない。したがって、流体は形の変化には抵抗しない。また、流体では、法線応力は互いに押し合うように働き、これを圧力という。完全流体では、静止状態・運動状態にかかわらず接線応力はゼロであり、法線応力=圧力は考える面の選び方によらず一定である。粘性流体でも、静止状態であればこのことがいえる。これがパスカルの原理である。水はそれを入れる容器の形に従って自由に形を変えるが、袋に入れた水を押し縮めようとすると、その圧力で抵抗し、どの方向から押しても圧力は等しい。固体では、圧力は向きによって違っているのでパスカルの原理は成立しない。パスカルの原理は次のようにして証明できる。

 流体中に高さがhのような三角柱を考える。流体は静止していると仮定すると、この三角柱に働く圧力はつり合っている。圧力は単位面積当りの力であることを考慮すると、水平方向の力のつり合いpAhasinθ=pBhbで、垂直方向の力のつり合いはpAhacosθ=pChcと表される。ところが、asinθ=b,acosθ=cであるから、pApBpCとなり、圧力は面のとり方によらず等しいことがわかる。

池内 了]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パスカルの原理」の意味・わかりやすい解説

パスカルの原理
パスカルのげんり
Pascal's principle

密閉した容器内で静止している非圧縮性流体の1点で圧力の増加があると,流体内のすべての点で同じ大きさの圧力の増加がみられるという法則。 B.パスカルが 1653年に発見した。水圧機や油圧機はこの原理を応用したものである。圧力は単位面積あたりの力であるから,面積の異なる2つのピストンを使い,小さい面積のほうに力を加えると,大きい面積のほうで大きい力を得ることができる。

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