ドニ(読み)どに(英語表記)Maurice Denis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドニ」の意味・わかりやすい解説

ドニ
どに
Maurice Denis
(1870―1943)

フランス画家グランビルに生まれる。17歳のときからアカデミー・ジュリアンに、ついでエコール・デ・ボザールに学ぶ。1890年サロンに初出品。ポンタバンゴーギャン教訓を得たセリュジエを中心とする「ナビ派」の結成に参加。ドニは年少であったが、やがてこのグループの指導的な存在として、90年、現代絵画の基本的路線となる理論「一枚の絵とは、軍馬裸婦やなんらかの逸話である以前に、本質的に、ある秩序で配置された色彩が覆う平坦(へいたん)な面であることを想起しよう」を宣言(『アール・エ・クリティック』誌)。簡略化された形態、アール・ヌーボー風の曲線の体系、穏和な色彩、理想主義的な主題が、90年代から20世紀初頭の彼の作品を特徴づけている。1912年シャンゼリゼ劇場の天井画を描くが、翌年ごろから宗教画に専念し、19年にはデバリエールとアール・サクレ工房を設立している。多くの装飾壁画、挿絵を手がけ、『絵画理論』(1912)、『宗教美術史』(1939)などの著作もある。その他の代表作に『セザンヌ礼賛』(1900・パリ国立近代美術館)。サン・ジェルマン・アン・レーに没。

中山公男

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドニ」の意味・わかりやすい解説

ドニ
Denis, Maurice

[生]1870.11.25. グランビル
[没]1943.11.13. パリ
フランスの画家。 1888年アカデミー・ジュリアンとエコール・デ・ボザールに学び,P.セリュジエ,E.ビュイヤール,P.ボナールらを知る。ゴーガンの強い影響を受け反印象主義を標榜し,彼らと 1880年代末にナビ派を結成,象徴主義美術運動を推進した。 1900年有名な『セザンヌ礼賛』を描く。 1895,97,1907~08年のイタリア旅行で 14~15世紀のフレスコ画感銘,次第に宗教的モチーフに忠実な作風に移った。 19年パリにアトリエ・ダール・サクレを創設。宗教芸術復興運動を起し,フランス各地の聖堂装飾画を描いたほか,美術論『理論』 Théories (1912) ,『新理論』 Nouvelles théories (21) を残した。

ドニ
Denis

パリの初代司教,フランスの保護聖人。ラテン名 Dionysius。3世紀中頃布教のためゴールのパリに送られ殉教。ツールのグレゴリウス (6世紀) の史書の記述が8世紀に誤解され 90年頃の人とされ,9世紀にはインドゥマンが彼をディオニュシオス・ホ・アレオパギテスと同一人と考え,ディオニュシオス偽書の著者とした。伝説では斬首されたのち,首を手に歩いたとされ,美術ではそのように表現される。祝日 10月9日 (東方 10月3日) 。

ドニ
Denis, Jean-Baptiste

[生]1643
[没]1704
フランスの医師。パリ大学教授,ルイ 14世の侍医をつとめた。記録によると,数度の動物実験をしたのち,1667年頃に出血多量で重態の青年に子ヒツジの血を輸血して成功したといわれる。しかし,その後事故が起ったので,68年に動物血のヒトへの輸血は禁止された。

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