同一性(読み)どういつせい(英語表記)identity

翻訳|identity

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

同一性
どういつせい
identity

哲学上最も基本的な概念の一つ。差異性の対概念。Aが異なった状況においても常に同じものであり,同じものとして認められるとき,A は自己自身と同一である。このとき A=A において同一性が成立しているという。 A=A で表わされる同一律とは,いかなる概念も一連の思考過程においては厳密に同義であることを要求する論理学的原理であり,換言すればある判断において使用された概念的表象が不変の意義を維持することについての要求といえる。同一性は狭義には事物がそれ自身に同じであること (自己同一性) をいい,複数の事物の間には類似性ないし相等性が成立しうるのみである。ただし現実的には事物は変化するので自己同一を保ちえない。プラトンはこの一瞬たりとも自己同一でありえない事物的存在に対して,純粋に一つの形相すなわち自己同一を保つ恒常不変の真実在としてのイデアを立てた。哲学史上同一性の概念を初めて用いたのはパルメニデスとされているが,厳密な意味での同一性かどうか解釈上問題がある。 (→同一と他 )

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世界大百科事典 第2版の解説

どういつせい【同一性 identity】

あるものがあるものとして存立しあるいは同定identifyされるとき,そのものは同一性をもつという。同一性は,したがって,一面,あるものがあるものと異なったものでないことをいうものとして,差異differenceないし差異性と対立し,他面,あるものがあるものと異なったものになることがないことをいうものとして,変化と対立する。ここで,同一性―差異,同一性(恒常性)―変化という2組の対立概念は,いずれも,一方を欠いては他方の規定が困難になるような種類のものである。

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大辞林 第三版の解説

どういつせい【同一性】

〘哲〙 あるものが時間・空間を異にしても同じであり続け、変化がみられないこと。
物がそれ自身に対し同じであって、一個の物として存在すること。自己同一性。
人間学・心理学で、人が時や場面を越えて一個の人格として存在し、自己を自己として確信する自我の統一をもっていること。自我同一性。主体性。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

同一性
どういつせい
identity

個物が時と場所の相違、諸性質の変化などを通じてそのもの自身であり続けることをいう。人の場合はとくに「人格同一性」とよばれる。また二つのもの(昨日の私と今日の私)が数において一つ(私自身)であることを「数的同一性」ないしは「自己同一性」、二つである場合(私と双子の兄弟)を「質的(種)同一性」という。後者は類似性と同義である。ヘラクレイトスの「われわれは同じ河流に入り、また入らない」という逆説にみられるごとく、同一性は古来哲学者たちの枢要な関心事であった。ロックおよびヒュームは、共時的な場面では単一性のみが問題となることから、同一性の概念の起源を通時的な場面に求め、その根拠を、異なる時と場所で同じものであり続けるという「時空的連続性」に置いた。それに対してライプニッツは、共時的場面における同一性を「不可識別者同一の原理」として定式化した。すなわち、aがbのあらゆる性質をもち、かつbがaのあらゆる性質をもてば、aとbは同一であるとされる。現代では、同一性はおもに同一性言明として意味論の領域で取り扱われる。フレーゲは、もし同一性が事物のそれ自身に対する関係であるとすれば、a=bとa=aの間に認識価値の差がなくなるところから、同一性は対象を指示する名前や記号の間の関係であると考えた。すなわち「明けの明星=宵の明星」は同一の指示対象(金星)をもつが、その意味(対象指示の様式)は異なるとしたのである。また最近ではクリプキが様相論理学の成果を踏まえて多数の可能世界を貫く個物の同一性を問題にし、そこから一種の本質主義を主張して新たな問題提起を行った。[野家啓一]
『中村秀吉著『パラドックス』(中公新書)』

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