日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒオドシチョウ」の意味・わかりやすい解説
ヒオドシチョウ
ひおどしちょう / 緋縅蝶
large tortoiseshell
[学] Nymphalis xanthomelas
昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。日本では北海道、本州、四国、九州に分布し、以前は普通種であったが、近年は全国的に少なくなった。屋久島(やくしま)および種子島(たねがしま)以南の南西諸島には分布しない。国外では朝鮮半島、中国からヨーロッパの南東部にかけて分布する。はねの開張は70ミリメートル内外。はねの表は橙赤(とうせき)色で黒色の斑点(はんてん)があり、和名のヒオドシチョウはこの表面の色彩からきている。はねの裏面は表面とまったく異なり黒褐色で枯れ葉状。年1回の発生、暖地では5月下旬から6月上旬に、寒冷地では7月に発生し、羽化後しばらくは活動するが、まもなく休眠に入り、そのまま成虫の状態で越冬する。幼虫の食草はニレ科のエノキ、エゾエノキおよび各種のヤナギ類(ヤナギ科)、ときにハルニレ、アキニレ、ケヤキにもつく。卵は、春に越冬より覚めた母チョウによって食草の新芽に卵塊として産み付けられ、幼虫は群生して、食樹を丸坊主にすることが多い。
[白水 隆]