ヒス(読み)ひす(英語表記)Wilhelm His

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒス」の意味・わかりやすい解説

ヒス(Wilhelm His)
ひす
Wilhelm His
(1831―1904)

スイスの解剖学者、発生学者。バーゼル生まれ。バーゼル、ベルリンウュルツブルクの各大学で医学を学び、その間ヨハネス・ミュラー、ウィルヒョウらに師事した。1857年バーゼル大学、1872年ライプツィヒ大学の教授となる。発生の仕組み(機構)の研究で名高く、胎児の発生の研究から、妊娠時期を最終月経の初日から計算する方法を開発した。またミクロトームを発明して顕微鏡の利用法を飛躍的に拡大し、組織学の発展にも貢献した。

 同姓同名の息子(1863―1934)はバーゼル、ゲッティンゲン、ベルリンの各大学で内科学の教授を歴任心臓刺激伝導系発見で知られる。房室束ヒス束ともよばれる。

[澤野啓一]


ヒス(Alger Hiss)
ひす
Alger Hiss
(1904―1996)

アメリカ官吏。1936年国務省入りし、1945年サンフランシスコ国連創設総会事務総長、翌1946年第1回国連総会米代表団首席顧問。1947~1949年カーネギー国際平和財団理事長。マッカーシズムの赤狩り攻撃の代表的犠牲者一人で、1948年下院非米活動委員会でソ連スパイの疑いをかけられる。偽証罪に問われ、1951年に有罪判決を受けた。ヒスは一貫して無実を主張していた。

[藤本 博]

『井上謙治訳『汚名――アルジャー・ヒス回想録』(1993・晶文社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒス」の意味・わかりやすい解説

ヒス
Hiss, Alger

[生]1904.11.11. ボルティモア
[没]1996.11.15. ニューヨーク
アメリカの元国務省高官。ハーバード大学法学部卒業。 1936年国務省に入り,F.ルーズベルトの顧問としてヤルタ会談に出席。 45年サンフランシスコ国連創設会議臨時事務総長,46年ロンドンの第1回国連総会でアメリカ代表団首席顧問,46~49年カーネギー世界平和財団総裁。 48年夏,アメリカ下院非米活動委員会は,元共産党員 W.チェーンバーズ (当時『タイム』誌編集主任) から,「37,38年にヒスから国務省の秘密文書を手渡された」との証言を引出した。ヒスはこれを否定したが,結局偽証罪に問われ,50年1月禁錮5年の判決を言い渡され,服役。 54年刑期満了前に釈放されたが,ヒスは終始無罪を訴え続け,92年無罪が確認された。この事件を契機として J.マッカーシー上院議員は「国務省に浸透している共産主義者」の摘発に拍車をかけた。

ヒス
His, Sir Wilhelm

[生]1831.7.9. バーゼル
[没]1904.5.1. ライプチヒ
スイス系のドイツの解剖学者,発生学者。 J.ミュラー,R.ウィルヒョーなどに師事し,バーゼル大学教授 (1857) 。 1872年にライプチヒ大学に招かれ,解剖学研究所を創立。人体発生学を創始し,リンパ系組織学,胎児の発生学に業績がある。顕微鏡用に標本を薄切するためのミクロトームの考案者。妊娠期間を算出するヒス法則もその創案。

ヒス
His, Wilhelm Jr.

[生]1863
[没]1934
ドイツの解剖学者,心臓学者。 W.ヒスの子。バーゼル大学,ゲッティンゲン大学教授 (1907~32) 。 1893年,心臓の刺激伝導系のヒス束 (→房室束 ) を発見。 1907~26年,ベルリン大学教授。

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