日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミクロトーム」の意味・わかりやすい解説
ミクロトーム
みくろとーむ
microtome
動植物の器官や組織、胚(はい)などの標本を薄切するのに用いられる器械。動植物の体は多数の細胞から成り立っているので、体の成り立っているようすを知るためには、細胞の形態、配列の仕方、細胞間物質の様態などを調べる必要がある。このために組織学では、各種の標本をおよそ細胞一層分の厚さ(数マイクロメートル)に薄切し光学顕微鏡で調べる。いろいろな形式のミクロトームがあるが、いずれも三つの部分から成り立っている。鋭い刃(およびこれを保持する部分)、この刃を標本に向かって、あるいは刃に向かって標本を駆動する部分、標本をある定められた厚さに送り出す部分である。数マイクロメートルという微細な厚さを送り出すためには、斜面やねじが巧妙に組み合わされて使われる。とくに、垂直に固定された刃に向かって標本を押し下げて切り、ふたたび標本を持ち上げるための力を利用して、標本台に直結しているピッチのごく小さな精密なねじをわずかに回転前進させ標本を送り出す方式のものが使われることが多い。電子顕微鏡による観察に必要な薄さ(10分の1マイクロメートル以下)の切片を得るのには超ミクロトームが使われる。
[竹内重夫]