法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をする罪(刑法169条)。本罪は国家の司法作用の適正を保護する。刑法第2編第20章は、「偽証の罪」として、本罪のほか、虚偽鑑定等の罪を規定している。なお、虚偽鑑定等の罪は、法律により宣誓した鑑定人、通訳人または翻訳人が、虚偽の鑑定、通訳または翻訳をすることにより成立する(同法171条)。
偽証罪は、おもに刑事訴訟法(154条)、民事訴訟法(201条)に基づき宣誓した者、すなわち、刑事裁判や民事裁判で宣誓書を読み上げ、これに署名・押印した者だけにつき成立する(身分犯)。したがって、この宣誓をしていない証人や、捜査段階での参考人は本罪の主体となりえない。「虚偽の陳述」の意味につき、通説・判例は、証人が自己の記憶に反することを述べることと解する主観説によるが、客観的真実に反することを述べることと解する客観説もある。主観説によると、証人が記憶に反する陳述をしたところ、たまたま客観的な真実と合致していたとしても本罪が成立することになる(判例)。しかし、自己の記憶に反する証人の陳述が客観的真実に反することが明らかな場合には、司法判断を誤らせる危険が認められないから、本罪の成立を否定すべきであろう。なお、証人が質問に対し黙秘したり、理由なく証言を拒否することは、本罪でなく証言拒絶罪(刑事訴訟法161条)にあたる。
なお、「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」(議院証言法)第6条、地方自治法第100条7項にも偽証罪の規定がある。前者にあっては各議院もしくは委員会または両議院の合同審査会の告発、後者にあっては議会の告発をもって論ぜられる。
[名和鐵郎]
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をする罪で,刑は3ヵ月以上10年以下の懲役(刑法169条)。法律により宣誓した鑑定人,通訳人が虚偽の鑑定,通訳をしたときも,同様である(171条)。偽証罪は国家の審判作用を保護するために設けられている。偽証罪の主体は法律により宣誓した証人に限られるが,宣誓は証言の前でもその後でもよい。単に証言を拒否するのは証言拒否罪(刑事訴訟法161条,民事訴訟法200条)であって,偽証罪ではない。〈虚偽〉の意義については,客観的真実に合致するかどうかを標準とする客観説と,証人の主観的な記憶を標準とする主観説が対立している。通説は主観説に立脚するが,判例がすべて主観説を採っているかどうかは疑わしい。刑事被告人は自己の被告事件について虚偽の陳述をしても処罰されない(被告人の立場は証人と異なる)。だが,刑事被告人が自己の被告事件について,他人を教唆して偽証させた場合には問題がある。学説は偽証教唆罪の成立を肯定する説と否定する説に分かれているが,判例は一貫して肯定説を採っている。誤判防止の考慮から,偽証罪を犯したものが証言した事件の裁判確定前または懲戒処分前に自白したときは,刑は軽減または免除されうる(刑法170条)。なお,特別法の中にも,議院証言法をはじめ偽証罪の規定をもつものがある。
執筆者:大越 義久
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[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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