日本大百科全書(ニッポニカ) 「ひずみ計」の意味・わかりやすい解説
ひずみ計
ひずみけい
地殻変動の観測の一部として、岩のわずかなひずみを精密に測る機械。地球の表面の変形を調べたり、岩にかかっている力の大きさを推定するために、地震や火山噴火の予知の観測に使われている。感度の高いものは、10億分の1というひずみさえ測ることができ、太陽や月の引力で地球そのものが変形する地球潮汐(ちょうせき)を観測できる。
機械としての原理は単純なもので、「石英管伸縮計」は、地下に掘ったトンネルの中で、数十メートル離れた岩に立てた2本の柱の間に石英の管を渡し、柱の間の距離の変化を精密に測る。また「体積ひずみ計」は直径15センチメートル、長さ4メートルほどの金属の筒にシリコン油を入れ、岩に掘った井戸の底に入れて膨張セメントで固めたもので、周りの岩がひずむことで油の面がわずかに上下するのを測る。この体積ひずみ計は感度が高く、設置にはトンネルを必要としないので場所をとらず、東海地震をプレスリップ(前兆すべり)の段階で検知して予知するために、気象庁は東海地方などに約60台、そのほか全国各地に大学が配置して監視を続けている。しかし、東海地方に限らず、世界のどこでも大地震の前のプレスリップが観測されたことはまだない。
ところでひずみ計に限らず、地殻変動の観測器は感度が高いだけに、地下水の増減や降雨によりデータが変動してしまうなど、地下にある岩盤の純粋なひずみを正確に測ることは当初考えられていたよりもむずかしいことが知られるようになってきている。
[島村英紀]